最低賃金を上げれば生活の質、景気は上がるか?

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おはようございます。
滋賀県の大津市議会議員、藤井哲也です。

お盆真っ最中で、皆さまもお墓参りに行かれていたり、帰省されていたり、旅行に行かれていたりと様々だと思います。
暑い日が続きますので、くれぐれもお体ご自愛くださいませ。


さて、先日気になる報道がなされました。

最低賃金14円上げで決着、脱デフレへ一歩 雇用調整の懸念も

2013年度の最低賃金の引き上げ幅の目安が6日、全国平均14円に決まり、3年ぶりに2ケタ増が実現した。安倍政権はデフレ脱却に向けた所得の底上げ策に一歩踏み出した形で、今後は幅広い賃上げの議論に焦点が移る。一方で大幅な賃上げは企業負担となるため雇用調整を招くとの懸念も根強い。中小企業や地域経済の支援策が必要との声も上がっている。
平成25年8月7日 日経新聞電子版より抜粋引用


労働者の最低賃金が全国平均14円引き上げで決定したとのことです。
最低賃金は最低賃金法によって定められている、労働者の最低限の賃金です。

最低賃金が上がるのはいいことだというのは当然のこととして、先に引用した日経新聞の記事にもあるように雇用調整の懸念があるのも事実だと思います。

よく、「最低賃金が上がれば生活の質が上がるから良い」、「最低賃金が上がれば(消費量が増えて)景気が良くなる」と
言われます。
私はそうした考えに一定の疑問を抱いています。

なぜならば、「賃金(Pay)」と「働き具合(Performance)」は連動するからです。
特に最近は成果主義的人事要素が普通になってきていますので、その傾向は強いはずです。

最低賃金だけ上がれば問題ないのですが、企業側としては当然パフォーマンスの向上を求めます。
仕事の能率と成果が賃金上昇分(今回で言えば749円→763円の14円分)上がらなければ、その人材を抱えておくことがマイナスとなってしまいます。
企業側の努力すべきこととしては、労働者の能力開発機会の提供と、経営の効率化による労働分配率の上昇などが考えられますが、多くの企業ではすでにそうした施策は取られていることがほとんどです。
能力開発機会の向上にしても、実際に能力アップできるかどうかは労働者の意欲にかかっている部分がありますし、経営の効率化にしても多くの企業で合理化は相当程度進んでいます。
消費税増税が目の前に迫り、また毎年社会保障負担(厚生年金等)が増加し続けている中で、企業の経営努力のみに最低賃金を押し付けようとしている制度そのもののあり方に非常に疑問を持つわけです。

最低賃金が上がることによって、これまで雇われていたアルバイト、パートは雇われなくなったり、または既存のアルバイト、パートの方も人件費上昇による経営圧迫によってその職を失うことになるかもしれません。


私が思うに、最低賃金を国が一方的に決定するのは福祉的観点からのはずですが、それを企業に押し付けるからには、その補てんを国がすべきではないかと考えます。
具体的にいえば、最低賃金上昇分(今回は全国平均14円)について、法人税から控除するか、または最低賃金上昇分補てん助成金を用意するかです。


「中央最低賃金審議会」の議論の経緯を見てみますと、生活保護水準との兼ね合いで、最低賃金が労働意欲を低下させる水準ではないかという議論が基本線となっているようです。
【参考】中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(8月5日)


確かにその考えは正しいと思います。必死で働いても生活保護者よりも収入が少なければばかばかしくて働く気にならないと思います。ここには「ペイ=パフォーマンス」の論理が成立しています。
しかしながら、最低賃金を上げることによって伴う、「ペイ=パフォーマンス」については十分な議論がなされたのか疑問に思います。
私は、生活保護水準との乖離解消の観点のみならず、雇用に与える影響を考慮して、最低賃金は決定されるべきだと思います。

またこの話になると話が広がってしまいますが、生活保護については、最後のセーフティネットと言えますので、私はしっかりとした補償をすべきと思います。見直しは当然必要です(医療費の高騰問題など)。


実体経済を引っ張るのは、最低賃金の上昇が先ではなく、私は成長戦力ありきだと思います。
企業の競争力を増加を促進するために、国は成長戦略を明確にし、規制緩和を行い、技術革新及び専門教育と新規創業施策の充実を行い、中小企業に至るまで雇用環境を整備する。
そうすることによって自然と最低賃金は上昇するものと思います。
そうした対策が不十分なまま、国が負担することなく、最低賃金上昇分を企業に押し付けるやり方は本当に問題だと思います。

もしかしたら、最低賃金を上げて潰れるような会社は、潰れてもらって結構という、イノベーションを強力に(強引に)けん引しようとする国の狙いがあるとは思いたくはないのですが。

以上雑感です。


大津市議会議員 藤井哲也拝




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