2018.6月議会 一般質問(5)子育て経験の活用について

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 本年3月で卒業した京大公共政策大学院では、少子化対策やポスト就職氷河期世代に対するキャリア形成支援を同時に満たすための施策を検討しました。そして、子育て経験や、ボランティア経験などが仕事上にも生きる知識・スキルの獲得につながっているのではないか?もしつながっているのであれば、これまで非正規労働や結婚出産を機にキャリア断絶の不遇をかこっている人たちに、光明を照らすことができるんじゃないかろうかと考えました。
 研究としては、約600人の方へアンケートを行い、その結果に基づいて、統計的に「子育て経験がマネジメントスキルの獲得につながっているのか?」を分析するもので、結果としては「私の仮説は支持された」というものでした。つまり、子育て経験は、マネジメントスキルの獲得につながっているというものです。

 今回はこの研究成果に基づいて、大津市に対しても、子育て経験者の有効活用や、労働市場にいる子育て経験者の就労支援について取り上げた、政策提言型の質問です。


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【藤井議員】(質問1)

 私ごとながら、この3月に2年間通いました大学院を修了いたしました。大学院での研究テーマは、私のライフワークでもある働く人のキャリア形成です。特に私と同じ時代を過ごしてきた1990年代半ば以降に学校を卒業したポスト就職氷河期世代の人たちは、産業構造や雇用慣習が大きく変わってきたこともあって、就業する雇用形態によりキャリア形成に違いが見られ、長く非正規社員で働いてきた人はビジネススキルの形成に遅れをとり、結果的に低収入や不安定な雇用状態により、結婚や出産をちゅうちょする要因ともなっています。また、近年、男女共同参画の推進や夫婦共稼ぎモデルの一般化によって、都市部を中心に保育ニーズが急速に高まるとともに、仕事も家庭も大切にするワーク・ライフ・バランスの考え方が普及してきました。
 私自身も子育てに参画する中で気づいたことが、子育て経験がビジネススキル獲得にも効果があるのではないかということでありました。私自身が実体験を通じて言えるのは、視野が広がったこと、そして仕事管理や時間管理のレベルが上がったと感じていることです。子育て経験は無駄ではない。仮に2年間の育児休暇を取得したとしても、頑張って育児に取り組んだならば、仕事にも通ずるスキルを獲得できるのではないかというふうなことです。もしこのようなことを実証できるならば、育児に専念して働かないことへの後ろめたさの解消や育児経験者の就労支援、職場復帰後の人材活用、職場の生産性向上にもつなげることができるのではないかと考えました。
 また、現在は十分には進んでいない男性の育児参画も、子育て経験がビジネスにおいても生かせられることが実証できるならば、男性の育児参画意欲を高めて、家族全員のワーク・ライフ・バランスも実現できるのではないかとも考えました。
 そこで、教員指導のもと、マクロミルというネットリサーチ会社に委託して、約600件のサンプルをとり、3年以上の子育て経験がどのようなビジネススキルの獲得につながっているのかを分析しました。その結果が投影している図表のものです。




 子育て経験や社会活動ダミーという項目がありますが、ここの星印みたいなアスタリスクがついてます。このマークがついてるところが因果関係がある、有意性があると言われるものになっています。
 見てわかるとおり、子育ての経験は「テクニカルスキル」、「ヒューマンスキル」、「コンセプチュアルスキル」というロバート・カッツという経営学者が提唱したマネジャーに求められる三つの能力要素、すなわち業務を遂行する上で必要なテクニカルスキル、人間関係を管理するヒューマンスキル及び事柄や問題の本質を捉えるコンセプチュアルスキル、全てにプラスの影響を与えているというふうなことがわかりました。
 大学院を卒業した現在もより詳細な調査、分析を進めており、特に男性は育児経験をすることによって視野に広がり、ひいてはマネジャーに特に求められる「コンセプチュアルスキル」獲得につながっていることや、仕事と育児において類似的に高められる能力があることもわかってきました。このような分析結果は、公共政策に活用することができるものと考えています。一連の研究に対して、教授からは、大変重要な発見という評価も頂戴し、このたび学会への入会も認められることとなりました。
 本市が平成26年度に行った男女共同参画に関する意識調査を見ても、男性の育児や家事への参画も十分ではないと考えられます。育児や家事への男女共同参画が実際になかなか進まないのは、固定的な性別、役割分担意識や過去の統計データに基づいた合理的判断から結果的に生じる統計的差別が背景にあると言えます。このような頑強な考え方に対して男女共同参画を推進していくために、人事労務施策で行えることはもちろん取り組んでいくべきでありますが、家庭内の役割分担を見直していくことについては、人事労務施策では限界があるのも事実です。私見としては、公共が育児や家事の経験を価値あるものと評価し、男性も育児や家事に参画する動機づけを高めていくことが求められているように考えています。
 そこで、男性の育児、家事参画を推進していくために、大津市も育児や家事の経験やキャリア形成にとっても価値あるものという認識のもと、男性育児経験者による仕事にも生かすことができる育児、家事経験などの座談会を開催するなどとともに、積極的に周知啓発していくなどの取り組みを行うことは効果的だと考えます。今後、どのように男性の育児参加、家事参加を促進しようとするのか、本市の考えを伺いたいと思います。


【山口政策調整部長】(答弁1) 
 御質問にお答えいたします。育児、家事分野への男女共同参画の推進について、今後どのように男性の育児参加、家事参加を促進しようとするのかについてでありますが、本市の調査において依然として固定的性別役割分担意識等が残っていることが明らかであることから、今後もこの解消に向け、男性の育児、家事参画について、継続的に周知啓発に取り組む必要があると認識しております。
 特に本市における育児、家事分野への男女共同参画の推進については、第3次大津市男女共同参画推進計画おおつかがやきプランⅢにおいて、固定的性別役割分担意識を解消していくための実践と検証及び男性の家事、育児、介護への参画の推進を掲げ、市として総合的に取り組みを進めております。
 具体的には平成27年度にハッピー育Men制度を創設し、男性職員の育児参画や職員自身のワーク・ライフ・バランスを推進するとともに働き方の見直しを進めてまいりました。さらに、昨年度に市長、教育長、公営企業管理者、消防局長の全ての任命権者がええボス宣言として大津市版イクボス宣言を実施し、全職員のワーク・ライフ・バランスの推進や働きやすい職場の実現、管理職の意識の改革及び醸成を目指しております。
 これらの取り組み成果については、引き続き大津市女性活躍情報サイト「スマイル・リーグ」等を活用し、市民や市内事業所に広く周知啓発を図ることにより、本市における男女共同参画の機運の醸成と総合的な施策の推進に努めてまいります。

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【藤井議員】(質問2)

 育児経験は、人格的にも、ビジネススキルの面でも、その人を成長させると考えられます。そのように考えると、本市でも育児休暇取得後に職場復帰した職員や育児参画に積極的な男性職員が活躍できる環境づくりがより一層進められる必要があると考えます。
 そこで、本市では、今後どのように育休復帰者や育児参画に積極的な男性職員が活躍できる環境づくりを進め、知見や経験を活用していこうとされるのかをお伺いいたします。

【國松総務部長】(答弁2) 
 御質問にお答えいたします。育児、家事分野への男女共同参画の推進と育児経験者の活用等についてのうち、育児休業取得者や育児参画に積極的な職員が活躍できる環境づくりについてでありますが、まず本市においては、育児休業から復帰する職員につきましては、平成25年度より育児休業中の職員を対象に、育児休業者職場復帰支援研修として、育児と仕事の両立や復帰後のキャリア形成についての講演、また先輩職員との意見交換会などを行っており、仕事と家庭の両立に対する不安や悩みの軽減と育児休業後のスムーズな職場復帰に向けた支援に努めております。
 また、育児参画に積極的な男性職員が活躍できる環境づくりについては、先ほどの答弁もありましたとおり、平成27年4月よりハッピー育Menと称し、男性職員の育児参画の取り組みを推進しております。これは男性職員が育児に関する休暇の取得計画を所属長に申し出るためのツールとして、育児参画フローシートや育児参画計画書を準備し、育児参画について所属長とコミュニケーションを図るための取り組みであります。
 議員お述べのとおり、育児の経験は人格的にもビジネススキルの面においても職員の成長につながる貴重な経験と考えており、引き続き男性、女性ともに育児に積極的に参加し、復帰後において活躍できる環境づくりに努めてまいります。以上、私からの答弁といたします。

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【藤井議員】(質問3)

 最後に、子育て経験が豊富にありながら、就職氷河期に学校を卒業するなどして低賃金で不安定な非正規就労を続けてきた方を対象としたキャリア形成支援について取り上げたいと思います。
 先ほど紹介した回帰分析結果によると、正社員としての就労経験は総じてビジネススキルの獲得に貢献しているものの、非正規社員としての就労経験は、ビジネススキル獲得との因果関係は見られませんでした。もう一度投影お願いします。



 正規労働者としての就労経験は「テクニカルスキル」、「コンセプチュアルスキル」には影響しています。しかし、非正規労働者としての就労年数は、いずれのスキルにもつながっていないというふうな結果になってます。
 1990年代半ばから2000年代まで続いた就職氷河期では、正社員として働きたくとも働き口がないまま年齢を重ね、今ではアラフォーと呼ばれる35歳から40代前半の壮年期を迎えている人が多くいます。返す返すも、団塊ジュニア世代も含む同年齢層が不安定な生活基盤のまま年齢を重ねて出産適齢期を超えつつあることは、日本社会にとって大きな問題であったと考えます。
 また、これまでビジネススキル獲得の機会が少ない、非正社員の就労経験が長かった人にとって、このまま60歳、70歳と年齢を重ねれば、低貯蓄、低年金などであることからも、失職や病気療養などによって生活に困窮する人たちが増えることも想定されます。この世代の就労支援は、若年者への支援とともに、その必要性が増してきているとも考えます。
 そうした中、現下の売り手労働市場では、非正規就労の経験が長くとも、ビジネススキルの獲得効果が見られる子育て経験豊富な人たちであるならば、正規雇用への転換に政策の窓が開かれているのではないかと思われます。
 そうしたことから、本市で実施している若年者向けの就職フェアにおいて、専業主婦の方々や子育て経験が豊富な壮年者または育休後に職場復帰しようと考えている人に対しても門戸を広げたり、保育士や介護士など公共的サービスの担い手不足も知っていただき、正社員就労やキャリアアップを促すようなセミナーを開催するなどの取り組みも期待したいところです。
 ついては、子育て経験が豊富な非正規労働者等へのキャリア形成支援について、本市が検討をしようとする取り組みがあるようでしたら、その内容をお伺いいたします。

【金利産業観光部長】(答弁3)
 御質問にお答えいたします。3点目の子育て経験が豊富な非正規労働者等へのキャリア形成支援についてでありますが、本市では、正社員として就職する時期を逃した非正規雇用や仕事を持たない44歳以下の市民を対象とした就職面接会の開催に取り組んでまいりました。また、あらゆる年代の求職者に対しては、産業就労コーディネーターによる移動労働相談により、就労やキャリアアップに向けた個別の支援を行ってまいりました。
 しかしながら、近年の雇用情勢を見ると、年齢などにとらわれず人材を求める事業所の声も聞かれることなどから、議員お述べの子育て経験が豊富な方をはじめ、幅広い年齢層を対象にした就職面接会など、今後は関係機関であるハローワーク大津や滋賀マザーズジョブステーションといった関係機関とも意見交換を行いながら研究してまいりたいと考えております。
 また、本市では、ワーク・ライフ・バランスセミナーの開催等にも力を入れており、市内事業所に対して子育て経験豊富な非正規労働者をはじめ、多様な人材の採用についても研修の機会を設けることで、キャリア形成支援につなげていきたいと考えております。以上、私からの答弁といたします。


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 今回の質問は、9月以降に行う育児支援の質問に向けたクッションの質問でもありました。
 議員任期中にできる一般質問の機会は、残り3回です。有効に活用し、自分が考えるより良い社会に向けて少しでも前進できるように、足も、頭も使いながら、取り組んでいきたいと思います。


藤井テツ





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