関ヶ原前夜。

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 大津市の地域自治が根底から揺るがされつつある。
 大津市は2010年ごろから進めてきた支所機能再編の検討業務を、2016年度、つまり昨年あたりから急速に進め、本年6月に議会に提出予定であった素案を、11月24日の市議会公共施設対策特別委員会にて初めて説明を行った。なお同日に大津市自治連合会に対しても説明がなされ、議会、自治連合会とも紛糾をした。

 素案は以下のスケジュールで進められる。


元データはこちら

 この再編案は、単に支所機能を集約してコスト削減効果を得られるというだけのものではない。
 大津市は小学校区単位で、市役所の支所が存在する、全国でも珍しい自治体である。
 きめ細かい行政サービスを提供し、行政相談機能、各種公文書発行機能、地域自治支援機能、防災機能に加え、公民館機能も備えている。市役所の支所は実質的に学区自治連合会の拠点ともなっており、学区自治連合会は市役所支所と一体となって、地域住民と行政との橋渡しを行い、様々な地域課題に取り組んできた。もちろん、学区自治連合会に対する批判が多いのは周知の通りだ。しかしながら、誰がこの地域自治機能を担うのかといえば、現実的には自治連合会しかないわけでもある。

 支所をなくしてしまえば、地域自治機能は低下する危険性が高いと考える。行政サービスは確かに集約して効率化を図っても良いかもしれないが、果たして地域自治機能は弱体化しないだろうか。やってみなければわからないが、やってみてダメだったからといって引き返すことができない道でもある。拠点(ハード)としての市民センターは存続するとしても、学区自治連合会は自治会を束ね、様々な地域課題に対処すべく、支所のアドバイスも得ながら、地域の声を行政へ届けてきた。いわば、支所は「暗黙知」を「形式知」へ変換するセンターでもある。この機能が集約され、広域的な支所で管理することは建前上は可能だろうが、それはこれまで大津市が行ってきた地域自治機能を根本から転換することにつながらないだろうか。

 学区自治連合会と支所機能との組み合わせにより、この「暗黙知」を「形式知」に変換する機能は、今後、大津市が提示するスケジュールに合わせて、学区自治連合会を主体とする「まちづくり協議会」に移行することで、付加されるものであろうか。

 また、防災上の問題もある。新たに「市民センター」改め「コミュニティセンター」となる合築施設にあっては、まちづくり協議会が「コミュニティセンター」を管理することになる。もちろん支所機能が残る施設にあっては、大津市役所の支所も市民が施設管理するということになる。防災行政無線や防災情報システム、防犯システムも、もちろん まちづくり協議会が管理をすることになる。
 いざ大地震など突発的な災害が起きた場合、まちづくり協議会は、公共の仕事であるはずの防災行政無線や防災情報システムを駆使し、責任を持って行政などとやり取りをしなければならない。そこには公共としての責任も生じる。
 こうした体制を、学区単位で構築することができるのだろうか。
 大津市の地域自治は、大きな転換にあると言える。

 今回の本会議・一般質問にあっては、私を含めて、7人の議員が市民センター機能等のあり方検討について取り上げた。私の質問に対する答弁等は改めて解説記事を書きたいが、いずれにせよ、大津市は議会や自治連合会の意見を聞き、素案を案にまとめ、それを学区単位で市民向けに説明を行っていくというものであった。しかしその市民向け説明も、市民部長は「公聴のためでより良い案にしていくために行う」としていたにも、関わらず、市長は「市民の皆さんにも納得いただけるように説明をしていきたい」というもので、微妙にどころか、政策形成プロセスにおける、市民向け説明機会の意義さえ問われる答弁がなされるに至った。




 次の市長選挙は2020年1月が予定されているが、その前の2019年夏から秋にかけて、支所再編の議案が提出されることになっている。これは市長選挙の争点外しである。
 行政改革推進委員に何を吹き込まれたのかわからないが、あまりにも性急な検討と展開に、議会や自治連合会はついていけていない。しかしながら、これは気づくか気づかないかは別として、市長からの宣戦布告なしの奇襲である。本会議一般質問では、市民ネット21の議員が、「高いボールを投げて徐々に交渉相手から妥協を探っていこうとしているが、市民は交渉相手ではなく、共に手を携えて前に進んでいく相手だ」という趣旨のことを言っておられたが、同感である。もう戦いを挑まれているのだ。この状況をつかむことができるかできないかが、政治感覚であろうし、この2月か3月までの今が当に勝負どころである。

 戦いを吹っかけられているにも関わらず、そうとは気付かずに、もしくは気付かないふりをして、宰相殿の空弁当の間に趨勢が決することがあってはならない。ここで動かないのであれば、次の市長選挙はすでに決まったと同じである。

 
大津市議 藤井テツ

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