東京都荒川区への行政視察報告

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おはようございます。真野シリーズの途中ですが、視察報告を2回書きたいと思います。
先週木曜日(10月22日)には東京都荒川区へ議員個人として、今週火曜・水曜(27日・28日)は議会施設常任委員会で山口県周南市と福岡県北九州市へ行政視察へ行って参りました。

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東京都荒川区への視察内容は、「荒川区総幸福度(GAH)にかかる施策展開」についてです。
荒川区では10年近く前から経済指標や従来型の住民満足度指標ではない全く新しい「幸福感」を指標とした施策導入を検討されてきました。そして平成25年度からは定量的(数値で量る)調査及び分析を進めてこられました。

区役所に到着するなり1階に2名の職員の方がお出迎えに来られており、議会事務局に着くと職員の皆様総出の中、拍手でお出迎え頂き、ただただ恐縮しました。


藤井哲也荒川区視察1

藤井哲也荒川区視察2 荒川区GAH視察


荒川区総幸福度(GAH=グロス・アラカワ・ハッピネス)については、荒川区が「公益財団法人荒川区自治総合研究所」を設立し、主にそちらで研究・調査・検証をされています。
大津市の隣接自治体・草津市が政策シンクタンクとして、総合政策部の内に「草津未来研究所」を設置し各種政策立案の基礎調査をされていますが、より研究の自由度を確保するために自治体が公益財団法人としてシンクタンクを設置しているケースは稀だと思います。

世界で最も経済的に貧しい国の一つ、ブータン王国が従来のGNP(国民総生産)とは異なる「国民総幸福(GNH=Gross National Happiness)」という概念を導入し、国民一人当たりの幸福を最大化することによって社会全体の幸福を最大化することを目指すべきだとする考えを国の政策に活用されていますが、荒川区のそれも同様で、「幸せ」という指標に基づいて政策立案をしています。

「荒川区総幸福度」についての詳細は荒川区自治総合研究所のホームページをご覧いただいた方がいいと思いますが、ここ数年でかなり調査研究が進んでいる感を受けます。

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今回の視察の目的は、人口政策としての幸福度調査の活用可能性についてでした。
定住対策(市外へ転出する人を減らす政策)と移住対策(市外から転入してくる人を増やす政策)を考えるうえで、「暮らしやすさ」や「住みよさ」という指標がありますが、ある意味そうした指標は既にある指標を組み合わせただけのものにすぎないことが多く、そこに住む人に対して直接的に「住みやすいか」「暮らしやすいか」を聞いたものではほとんどありません。
ほとんどのケースが、学校や保育所が人口に対してどれくらいあるか、交通アクセスがどれくらいいいかといった指標の寄せ集めです。

そうではなく、「幸福実感」をまず調査し、そこから要因分析を行っていくスタイルの幸福度研究を荒川区ではしておられます。

また出産世代(20歳~49歳)の女性の「幸福実感」と、「合計特殊出生率」とは正の相関性があると最近書籍で読みました。保育所をどれだけ作っても、または教育環境を充実したとしても、幸せ実感として、

 「結婚・出産・子育てしない人生の幸せ実感」 > 「結婚・出産・子育てする人生の幸せ実感」

という状態を改善できないならば、そうした保育所増設や教育環境充実の施策はほとんど意味がありません。現状では残念ながら、子どもを多く持つほど経済的な負担が大きく、得てして大変な生活となりかねません。子どもを持つ幸せは大変大きなものがあると私も親になって感じていますが、かといって3人、4人と子どもが欲しいかと言えば、「生活が大変になる」ということが容易に想像できます。つまり「少子家庭の方が幸せだろう」という認識です。

こうした認識を改善するための行政施策が求められています。
引き続いてこのテーマについては自分なりに勉強をしていきたいと考えており、来月には全国で一番幸福度が高いとされ、学力テストランキングも常に上位3位にあり、合計特殊出生率も高いという福井県に視察に行ってきてヒントを得てきたいと思います。
大津市、ひいては滋賀県の発展のためには、ここ最近行政へ提案し続けている「都市ブランディング・キャンペーンによるシビック・プライドの醸成」と同時に、もう一つ「幸福実感の向上」が欠かせないと考えています。


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一つ備忘録として。

荒川区では生涯学習推進計画に基づき、「荒川区コミュニティカレッジ」が平成22年からスタートしています。「まちづくりの担い手」を対象とした2年制のカッチリとした内容で、地域活動を行うために必要な知識や技術を身につける人材育成の場です。
1回2時間程度の講義を、月2回程度実施します。現在の1年生は、基礎課程として、「あらかわ学コース」「クリエイティブコース」のいずれかを受講し、2年次は専門課程として、「まちづくり学科」「共育学科」「健康・福祉学科」「クリエイティブ学科」のいずれかに所属し学んでいるものです。各コース30名定員で対象は18歳以上。現在60代の方が多いそうですが、20代から80代まで幅広い年代の方が参加しているそうで、今年で5年目の事業だそうです。もちろん受講料は必要です。

また、区役所職員のまちづくりの担い手づくりのために、「荒川区職員ビジネスカレッジ(ABC)」も設けておられます。この講座も「荒川区コミュニティカレッジ」同様に2年間のしっかりとした講座で、課長レベルの方がゼミを持ち、ゼミ生として若手職員が任意参加する組織内大学です。

大津市では、まちづくりの担い手として、数年前から「協働コーディネーター」制度の導入が市民部で、また私が提案した制度ですがコミュニティスクールの両輪である学校・地域コーディネート本部の中核人材である「学校・地域コーディネーター」制度が進み始めていますが、本来はこうした自治体設置講座による本格的なまちづくり教育がなされ、各コーディネーターはそうした講座を修めているべきだと思います。

大津市役所内の研修もどちらかと言えば、官僚的で、能力向上型のものやコンプライアンス意識醸成というものが多いように感じられます。少し前までは大津市役所内でも、荒川区の「ABC」ほどではないにしろ、先輩から後輩にゼミのように教える機会があったと言いますが、最近はそういう話は聞きません。職員自らが、大津のまちの未来を考えようとせず、市長のいうことに振り回され右往左往していることが、持続的な大津のまちづくりにつながっているとは思えません。


大津市議会議員 藤井哲也拝




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