議員研修会。太田肇教授による公務員のモチベーションアップについて。

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おはようございます。
滋賀県の大津市議会議員、藤井哲也(新世代・滋賀大津)です。

1点アナウンスです。
本日夕方にピアザ淡海でJC主催の知事選挙直前公開討論会がありますので、政策本位で考えておられる方はぜひ参加されますことをオススメです!

本題です。
昨日、大津市議会では、同志社大学政策学部とパートナーシップ協定を締結したことを踏まえ、同学部教授の太田肇先生にお越し頂き、「職員の意欲と能力を引き出す組織づくり」というテーマで講義を頂戴しました。

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太田教授とは私が人事管理の分野で会社を起こして以来、個人的にご助言等を頂いてきました。現在は、私も理事の一人を務めさせて頂いている「社団法人日本表彰研究所」でも所長として、研究活動にご指導を頂戴しています。
制度論に終始するのではなく、社員や職員のモチベーションの観点から組織変革のあり方を研究されておられ、特に「承認」と「自律」の重要性を豊富な研究事例をもとに社会に提言をなされています。
著書は多数あられますが、私が特に枕元に置いているのは「見せかけの勤勉の正体」と「公務員革命」です。いずれも素晴らしい名著だと思います。
【参考】太田肇教授(wikipedia)

太田教授も研修の冒頭に仰っておられましたが、「公務員」を対象にした「モチベーション研究」をされている方はほとんどおられません。
早稲田大学の稲継さんは公務員人事制度における権威ですが、制度論が中心の印象を強く私は持っており、モチベーションの観点からの研究ではおそらく太田教授が日本で最も研究が進んでいると思います。そうしたことから日本における公務員のモチベーション論の第一人者であると私は思っております。


研修内容をすべて紹介するのは長くなりますので、要点を私なりに以下まとめます。


1.公務員のやる気と能力の発揮を妨げているもの
 ①給与カットなどの待遇の低下(衛生要因の低下)
 ②公務員に対する世間の厳しい目(バッシングなどで承認欲求が満たされない)
 ③過剰な管理「職」(管理職が多すぎて若手職員の自立性が損なわれる)
 ④過剰な評価と過剰な管理(評価が細かすぎる)
 ⑤多忙化(事務事業が増え続けており特に女性のやる気を減じている)

2.公務員がやる気の源泉は?
 アンケートではほぼ半数の人が「承認欲求」に関するエピソードを挙げた。
 公務員はお金目当てで成っている人は少なく、社会貢献などを期待している。

3.求められる公務員像の変化
 定型的な業務が機械化や委託化によってなくなってきており、創造力や調整力などの能力が必要となってきている。従来のように「与えられた仕事を粛々とやる」というのでは、公務員として不十分であり、これからは「行政のプロとして使命を果たす」ということが必要となってきている。

4.組織改革のポイント
 ①組織はフラットに。(ラインとスタッフを切り離す)
 ②個人担当制にを導入する。 
 ③専門職型のキャリアアップのコースを増やす。
 ④できるだけ社会に出て住民の中に入って仕事をする。

5.自発的なモチベーションを高める人事施策
 ①部署の枠を超えたプロジェクトチームの多用。
 ②庁内FA制度などの導入。
 ③個々人の裁量権の拡大。
 ④成果(みせかけの勤勉ではない)の重視
 ⑤権限・責任の明確化
 ⑥ほめる取り組み、表彰制度の導入。
 ⑦自分の名前で仕事をし、発言する機会を増やす。(武雄市の事例)


また不祥事対策に「過剰管理」は逆効果との見解も示されました。
つまり明確に研究結果として、内部統制を強くする、過剰な管理を敷くことにより、不祥事が増えている事例が多いとのことです。要因としては、①自尊心の低下、②判断力・責任感の低下、③意識が内向きになる という点を挙げておられました。


また最後に私から以下3点質問をさせて頂きました。


【1】「内部統制」と「職員のモチベーション」
(藤井)
内部統制を強化すれば裁量権が損なわれ、職員一人一人の自律的な行動の余地がなくなる。そうなると官僚主義に陥り、ルール以外のことをやらないなど市民サービスの低下が考えられる。先生の所見を伺いたい。
(太田教授)
内部統制の強化が過ぎれば職員のモチベーションや市民サービスにも影響を与えかねない。
そのためには内部統制を行うにしても「メリハリ」を大切にすべきである。しっかり統制すべき部分は統制し、緩めるところは緩めるべき。また、個々の仕事の責任を明確にすることも重要である。つまり仕事の見える化、市民への見える化が重要である。

【2】「組織のフラット化」と「給与制度の激変の困難さ」
(藤井)
組織をフラット化して過剰な管理を廃することは私も同感ですが、公務員の場合は民間と異なり大胆な人事制度、特に給与制度の改定は難しい。どうすれば組織をフラットにして過剰な管理から脱却できるのかを伺いたい。
(太田教授)
いわゆる「ライン」と「スタッフ」を明確に分けるべき。そのために新規事業を増やしてスタッフを充てていくべきである。またそのような組織の激変が生じるときには反発が予想されるが、最も重要なことは「処遇」と「肩書き」は保証してあげなければならない。

【3】公務員組織における表彰制度
(藤井)
民間では多くの組織が表彰制度を活用して、社員のモチベーションマネジメントに生かしているが、公務員組織に合う表彰制度があれば教えて頂きたい。
(太田教授)
「軽い表彰制度」の導入をお勧めする。公式の人事考課からは切り離して行うべき。
例えば市民からの「いいね!」をポイント化して表彰しているところもある。また人事課が主導して表彰するのではなく、若いメンバーに任せるべき。



以上報告です。
職員のモチベーションアップが、市民へのサービスの質になって跳ね返ってくると私は思っています。大変勉強になる研修でした。


大津市議会議員 藤井哲也拝




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