いじめ問題第三者調査委の報告書を読んで。

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おはようございます。
大津市議会議員の藤井哲也です。

一昨日に市長がいじめ問題の第三者委員会の調査報告をもとにした「要望書」と「教育委員会制度の改正に関する意見」を文科大臣宛に持って行ったそうです。

文科相にいじめ被害救済の第三者機関常設を要望
大津市の中学2年男子生徒が自殺した問題で、越直美市長は6日、下村博文文部科学相を訪れ、子どもが学校外に救済を求めることができる第三者機関の常設などを、今国会での成立を目指す動きのある「いじめ防止対策基本法案」に盛り込むことを要望した。
(京都新聞より一部抜粋)


国(及び県)に要望や意見を出しに行くのはいいのですが、そうした結果、市民や子どもたちに影響を及ぼしますので、少なくとも「このような要望や意見を出しに行きます」ということを公表し、市民や議会から意見を求めるべきだと思います。
以前、市長は衆議院予算委の地方公聴会で「消費税増税」を要望したことがありましたが、やはり思うのは、「市長としての要望・意見」と「越氏個人としての要望・意見」を明確に分けるべきだと思うのです。
聞くところによると、市役所内部でも国に持って行った「提案及び意見」の内容を知る方はいなかったとのことで、市役所内の意見集約・合意形成もされずに、個人的に持って行かれた模様です。
今後、第三者調査委の提言を踏まえて、国への要望事項が変わったり、意見が変わることはないのでしょうか。
「要望内容」以前に、今回の国(及び県)への要望及び意見提出については、独断専行やパフォーマンスでは済まされない、大津市の方針決定プロセスに関する重大な事案だと感じています。



本題に入ります。
「いじめ問題第三者調査委の報告」を読んで以下、現時点での所見を記載します。
【参考】平成25年2月3日更新ブログ記事(第三者調査委「調査報告書」掲載)


■スクールカウンセラーの問題点(報告書p167参照)
2011年10月24、25日頃から27日にかけて事態は大きく変化しているように見てとれます。それまでは一部いじめの事実の容認や場合によっては因果関係に踏み込む学校関係者もいた中、スクールカウンセラーDが来校したのを機に、いじめがあったことを認めず、ましてや因果関係があった(という議論も)ことは封殺したようです。
市から提供された資料は重要な個所は黒塗りになっているのでなんとも言えませんが、書きぶりや前後の内容からすれば、ある学校関係者からなんらかの情報をスクールカウンセラーは得て、その情報をもとに担任や生徒に対して助言を行ったようです。
報告書が述べるとおりその中立性に問題があったことは言うまでもありませんが、私としては大津市の学校教育現場におけるスクールカウンセラーの運用にも問題があったと思います。
普通、スクールカウンセラーは子どもに直接触れてカウンセリングをすることになっていますが、大津市の場合は、「説教部屋」になっているようで、またどちらかというと「学校の先生のカウンセリング」にかける時間が相対的に多かったと思います。大津市におけるスクールカウンセラーの役割そのものに問題があったともいえ、そうした点から考えると、スクールカウンセラーの運用方法を変えることによって防げたのではないかと感じます。
しかしその背景には、スクールカウンセラーの人員不足という問題もあると思うので、その問題も含めて今後対応していく必要があると思います。


■いじめ(暴行・非行)をエスカレートさせた教員の能力・感性の問題 (報告書p174参照)
いじめが起きてしまい、教員(担任や主事、校長ら)が黙殺・隠ぺいしたこと自体、大問題だと思いますが、個人の資質や組織課題としての要因もあると思うので、それらは個別に処分したり、教育委員会改革を通じて行うべきと思います。
しかしながら、そもそもいじめがエスカレートしていくのを止められなかった能力・感性の問題にも焦点を当てなければならないと思います。
おそらくというかほとんどの教師は、まあまあ勉強ができて、特別荒れることもなく、小中高とスマートに生きてきたと思います。「不良や非行」に一時的にふれたとしても可愛らしいもので、そうした友達もいたことはいたと思いますが、本人は特別素行が悪いわけではないと思います。
また、ビジネス経験もないと思います。いわば純粋培養の中で育った経験の浅い教師が、暴行や非行を繰り返す現場に遭遇した場合、対応能力が不足しているか、または「感性」とひとくくりにしていいのか分かりませんが、対応できるケースが少ないはずです。
「調査報告」の提言に、『5年目、10年目の節目の研修で、1年か少なくとも6か月間、地元の福祉施設、介護施設、養護施設、情緒障害児短期治療施設、鑑別所、少年院など、教員の普段の生活と関連が少ないところで、実際に働き、目で見て、耳で聞き、身体全身で現実を感じ、忙しさでこころの奥底に眠っている感性を呼び起こしてほしい」とあるように、そうした機会を実地研修として導入するべきだと思います。(大津市は中核市なので県任用の教職員であっても独自研修することができる)
個人的には、採用前や初任者研修にも導入すべきと感じます。


■教育委員会委員と教育委員会事務局の関係性の問題点 (報告書p156参照)
調査報告書を読み、また教育委員会委員の方からも独自に話を聞いたところ、教育委員会事務局から教育委員会委員に対しては、情報はほとんど上がってこなかったとのことで驚きを禁じ得ません。
世間では、「教育委員会」と言えば、「教育委員会委員」を想像されることと思いますが、調査報告にある通り事件から20日以上経過した10月31日の教育委員会定例会まで、事務局から委員に対して、詳しい情報の提供がない状況が続いたようです。
文部科学省のホームページに「教育委員会」のことについて説明がなされています
この中で、教育委員会の役割として、「教育行政における重要事項や基本方針を決定し、それに基づいて教育長が具体の事務を執行」と記載されていますが、今回のケースのように教育委員会事務局から情報が上げられなかった(もしくは報告書の表現を借りるなら「フィクション」の情報を提供された?)ことで、機能しなかったと考えられます。
確かに「それにも関わらず」主体的に関与し、情報を事務局に上げさせることなどはできたかもしれません。
問題としては、「教育委員会委員」が「教育委員会事務局」に支配されている逆転現象が生じていることではないかと思います。(「支配」といえば言い過ぎかもしれません。)
そうした事態を憂慮して、隠ぺい発覚後は、教育委員会委員の方も事務局のことを鵜呑みにされなくなったと見受けます。
たとえば、平成24年8月教育委員会定例会では、なんと事件があった中学校の校長を、「大津市歴史博物館協議会委員の委嘱について」という議案で、事務局(校長会)はリストアップして挙げてきていたようですが、採決では「賛成2、反対3」で否決されており、委員の方々の良心が働いたと思います。
【参考】平成24年8月教育委員会定例会議事録
この事案からも明らかですが、教育委員会事務局の感覚は、市民のそれとは大きく異なると思います。
要は、教育委員会全体が悪いのではなく、教育委員会委員が教育委員会事務局をマネジメントできていないことが問題であり、それを解消することが問題解決につながると考えるところです。
場合によっては、教育委員会の必置義務をなくすことも検討すべきでしょうし(私はそうすべきと思います)、また「教育委員会委員」が「事務局」をマネジメントできるように、仕組みを改めることが必要だと思います。
市長が言うように、「教育委員会委員」が非常勤だからとか、政治的中立がどうとか、責任と権限の所在の分散というのは現実的に市長が講じる解決策からは遠い空論ではないと私は思います。


■学校と地域との連携に関する問題点 (報告書p188参照)
以前より私は「コミュニティスクール(地域運営学校方式)」の必要性を訴えております。
【参考】平成24年12月30日ブログ記事
今回の調査報告書では、地域の学校参加の必要性が提言されています。「子どもたちを育てる力は、学校にあると同時に地域の教育力によって大きく左右されるものである。」と記載されています。
私も教育は学校だけではなく地域全体で行うものだと思います。いじめや非行を発見し、教育する人は今も昔も家族だけではありませんし、今後もそうあるべきだと思います。
学校と地域が連携し、また学校の間(幼稚園、小学校、中学校、高校など)の連携も深めていくべきです。
そのためには、提言には「学校支援地域本部」が必要と述べていますが、この「学校支援地域本部」を有効に機能させるためには学校運営に地域が入る必要があると実感しています。
そのために、学校運営を広く市民と共有する取り組み「コミュニティスクール(地域運営学校方式)」は、早期に導入すべきではないかと考えます。


以上、すべての問題点を取り上げるのは難しいところですが、私なりに重要だと感じたポイントについて所感を記載しました。

2月議会でも多くの議員が、本報告書について所感を述べ、またいじめ対策について議論がなされると思います。
議会は市長案に反対しているわけではなく、よりよい案を提示したり、市長案の問題点を多角的に指摘しているにすぎません。
市民の皆さまにおかれても、ぜひ本会議の代表質問または一般質問にお越しいただき、どのような議論がなされるかご覧頂けましたら幸甚です。インターネット中継もなされます。


大津市議会議員 藤井哲也拝



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