「外部の第三者調査委員会」、私が考える疑問点【2】

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こんにちは。
滋賀県の大津市議会議員、藤井哲也です。

「外部の第三者調査委員会」について、市長の私的諮問機関的要素が強い専門委員でしっかりとした調査ができるのかという疑問をあげました。


2つ目の疑問は、「市長部局に設置する調査委員会では、教育委員会のことを調査できないのではないか」ということです。


地方自治法 第百七十四条  
1 普通地方公共団体は、常設又は臨時の専門委員を置くことができる。
3 専門委員は、普通地方公共団体の長の委託を受け、その権限に属する事務に関し必要な事項を調査する。



問題はこの条文の第3項の内、「長の委託を受け、その権限に属する事務に関し必要な事項を調査する」という部分です。
つまり、調査できる範囲は自然と市長が持つ権限の中に限定されるということです。以下は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」です。


地方教育行政の組織及び運営に関する法律

(長の職務権限)
第二十四条  地方公共団体の長は、次の各号に掲げる教育に関する事務を管理し、及び執行する。
一  大学に関すること。
二  私立学校に関すること。
三  教育財産を取得し、及び処分すること。
四  教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を結ぶこと。
五  前号に掲げるもののほか、教育委員会の所掌に係る事項に関する予算を執行すること。


(職務権限の特例)
第二十四条の二  前二条の規定にかかわらず、地方公共団体は、前条各号に掲げるもののほか、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又はすべてを管理し、及び執行することとすることができる。
一  スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。
二  文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)。
2  地方公共団体の議会は、前項の条例の制定又は改廃の議決をする前に、当該地方公共団体の教育委員会の意見を聴かなければならない。



今回の調査は「いじめと自殺との因果関係を調べる」とされていますが、市長が持つ教育財産の取得処分の権限や、契約締結権、予算執行権では、そうした部分の調査をすることができません。
逆に、教育委員会の権限や担当事務としては下記のようなものが同じく地方教育行政の組織及び運営に関する法律に挙げられています。


地方教育行政の組織及び運営に関する法律

(教育委員会の職務権限)
第二十三条  教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。
一  教育委員会の所管に属する第三十条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。
二  学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。
三  教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。
四  学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。
五  学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。
六  教科書その他の教材の取扱いに関すること。
七  校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。
八  校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。
九  校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。
十  学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。
十一  学校給食に関すること。
十二  青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。
十三  スポーツに関すること。
十四  文化財の保護に関すること。
十五  ユネスコ活動に関すること。
十六  教育に関する法人に関すること。
十七  教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること。
十八  所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。
十九  前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。

(事務の委任等)
第二十六条  教育委員会は、教育委員会規則で定めるところにより、その権限に属する事務の一部を教育長に委任し、又は教育長をして臨時に代理させることができる。
2  前項の規定にかかわらず、次に掲げる事務は、教育長に委任することができない。
一  教育に関する事務の管理及び執行の基本的な方針に関すること。
二  教育委員会規則その他教育委員会の定める規程の制定又は改廃に関すること。
三  教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の設置及び廃止に関すること。
四  教育委員会及び教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。
五  次条の規定による点検及び評価に関すること。
六  第二十九条に規定する意見の申出に関すること。
3  教育長は、第一項の規定により委任された事務その他その権限に属する事務の一部を事務局の職員若しくは教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の職員(以下この項及び次条第一項において「事務局職員等」という。)に委任し、又は事務局職員等をして臨時に代理させることができる。

(教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価等)
第二十七条  教育委員会は、毎年、その権限に属する事務(前条第一項の規定により教育長に委任された事務その他教育長の権限に属する事務(同条第三項の規定により事務局職員等に委任された事務を含む。)を含む。)の管理及び執行の状況について点検及び評価を行い、その結果に関する報告書を作成し、これを議会に提出するとともに、公表しなければならない。
2  教育委員会は、前項の点検及び評価を行うに当たつては、教育に関し学識経験を有する者の知見の活用を図るものとする。




今回の第三者調査委によって調査する内容は、市長が述べるように「市教委の調査に不備があったため、いじめと自殺との因果関係があることを前提に、あらためてその内容を調査する」というものであるならば、この法律においては教育委員会の権限や担当事務に該当することになり、調査することができないと思います。

ちなみに大津市の教育委員会の規定を見ると、


■大津市教育委員会行政組織規則

(趣旨)
第1条 この規則は、大津市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の権限に属する事務を処理させるため、その組織及び事務の分掌に関し必要な事項を定めるものとする。

(事務局の分掌事務)
第4条 事務局の課及び係の分掌事務は、次のとおりとする。

教育総務課企画総務係
(1) 教育行政に係る総合企画及び調査研究に関すること。
(2) 教育委員会所管の事務事業及び予算に係る連絡調整に関すること
(3) 教育に係る基本方針及び計画に関すること。
(4) 教育委員会の会議に関すること。
(5) 教育委員会所管職員(県費負担教職員を除く。)の任免、分限、懲戒、服務及び給与に関すること。
(6) 前号に規定する職員の福利厚生、保健衛生及び安全管理に関すること。
(7) 教育委員会所管職員(県費負担教職員及び幼稚園教員を除く。)の研修に関すること。
(8) 秘書、表彰、請願及び陳情に関すること。
(9) 職員団体及び労働組合に関すること。
(10) 公印の管理に関すること。
(11) 教育に係る広報、調査及び統計に関すること。
(12) 教育行政に関する相談及びこれに係る教育委員会内の連絡調整に関すること。
(13) 通学区域審議会に関すること。
(14) 他課等の所管に属さない事項に関すること。
(15) 課の一般庶務に関すること。

学校教育課指導係
(1) 学校教育の指導助言及び教育課程に関すること。
(2) 学校人権教育の推進に関すること。
(3) 学習指導、生徒指導及び進路指導に関すること。
(4) 特別支援教育に関すること。
(5) 教科書その他の教材の取扱いに関すること。
(6) 教育資料の調査、作成及び出版に関すること。
(7) 通学区域の設定及び変更に関すること。
(8) 市立の幼稚園、小学校及び中学校の学校選択制に関すること。
(9) 児童、生徒及び幼児の就学に係る指定校の変更、区域外就学等に関すること。
(10) 大津市奨学資金に関すること。
(11) 教育センターとの連絡調整に関すること。
(12) 教育相談センターとの連絡調整に関すること。
(13) 葛川少年自然の家との連絡調整に関すること。



と書かれています。

ここまで法令を見てきましたが、市長が設置しようとしている「専門委員」による第三者調査委員会では、本来調査しようとしていることが調査できない恐れが高いのではないかと疑問を持ちます。
実際に調査委員会を立ち上げてみて、何も調査できない事態に陥らないでしょうか。4ヶ月後かに出てくる調査結果というものは、教育委員会の担当事務(アンケート内容の精査)に触れることができないでしょうし、そうなればどのようなものになるのでしょうか。
単なる「専門委員」の方々による感想になってしまうのではないかと危惧します。

そう考えると、市長がやろうとしている調査というのは、単なるパフォーマンスではないかとも思えてきます。
文部科学省が平成23年6月1日に通知した「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」によれば、

『学校、教育委員会又は学校若しくは教育委員会が設置する「詳しい調査を行うに当たり、事実の分析評価等に高度な専門性を要する場合や、遺族が学校又は教育委員会が主体となる調査を望まない場合等においては、具体的に調査を計画・実施する主体として、中立的な立場の医師や弁護士等の専門家を加えた調査委員会を早期に設置することが重要であること。なお、学校又は教育委員会が主体となる調査を行う場合においても、適切に専門家の助言や指摘を受けることが望ましいこと。」の調査委員会』

とあり、おそらくこれは市長部局の「専門委員」では教育委員会が持つ権限や担当事務を調査することができないため、このように「教育委員会または学校もしくは教育委員会が設置する調査委員会」という記載をしているのだと思います。

しかし今回は教育委員会(と大津市?)の隠ぺい体質をも調査対象とすべきで、教育委員会が設置すると表明した「検討委員会」では不十分な再調査になることは目に見えています。
やはりここは、「市長部局と教育委員会の両方にまたがる真相調査のための附属機関」を設置すべきであると考えます。

果たして、今回、市長部局内に設置されようとしている「外部の専門家によって構成される内部の調査委員会」でしっかりとした調査ができるのでしょうか。


【3】へ続く。


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