政治家(候補者)の見分け方・見抜き方②

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 人事コンサルと地方議員の経験を踏まえて、地方統一選における政治家(候補者)の見分け方、見抜き方を書いています。前回記事で完結するつもりが少し分量が多くなったので残り2回に分けて書きまとめたいと思います。


【2】議員としての能力資質があるか?
 「想い」や「志」は最も大切だと思いますが、その次に重要だと私が考えるのは「能力」や「資質」です。企業の人材採用でも恐らく同じではないでしょうか? 
 
 ハッキリ言って“ずぶの素人”が政治家になったところで、税金の無駄遣いです。市民代表として市民や団体の意見を代弁してくれさえいれば良いというのであったとしても、要望を通そうという時は標準以上の専門性や知性が必要だと思います。昔のように「議員が言うのだから、市職員はやれ!」というのはもうほとんど通用しません。議員が言ったら確かに行政はプレッシャーに感じるのは事実だと思いますが、どの自治体においても緊縮財政の中で議員が言ったから物事がすんなり通るということはほとんどありませんし、コンプライアンス上、強い圧力は議員側にもリスクを伴います。

 問題をクリアに把握し行政と協力しながら物事を進めていくコミュニケーション能力や、逆に問題を指摘し是正改善を求めていくこと、若しくは(大半のケースがそうだと思うのですが)その両方の選択肢を使って戦略的に要望や提言を実現していく政治活動が求められます。
 ただ、真正面から理路整然と言っても予算編成・執行権は行政側にあるわけで、能力が高ければ物事が実現できるかというとそういうわけでもなく、あらゆる手段・アプローチを政治的感覚の中で取って、目的を実現していくことが求められるわけです。
 大津市でも共産党議員が理路整然と正しいと思われる提言をしたとしても、議会では一蹴されているのをよく見かけますが、単にクリティカルでロジカルな思考で行政に対峙しても、物事が実現しないことが政治活動の難しさです。

 しかし要望や提言の実現させる前提にあるのは「志」や「想い」と同じく、「能力」や「資質」だというのは間違いないと思います。

 行政職員はその道のプロです。大学を卒業して以来、ずっと土木建築畑を歩んでいる人、まちづくりや福祉に関わっている人など様々ですが、まず普通に考えて、5年、10年、20年とその道で仕事をしている人の方が一般人よりも詳しいのは当たり前だと思います。
 また行政組織はひとりひとりがプロであると同時に、組織として動いているので、抱えているナレッジや人脈つながりも大変広がりと深さを持っています。並みの知識経験では、普通の人では対抗できないし、普段のコミュニケーションや、要望・提言なども表面的なもので終わり、それなりの言い訳を述べられてあっさり終わってしまうということがありえます。

 市職員は議員とはあまりコンフリクト(緊張・衝突)は避けたいので、いつもは「先生、先生」と下手に出て、問題が生じないようにしていますが、実際の知識量、情報量は遥かに行政職員の方が多く持っているので、多くの政治家は踊らされ泳がされている存在です。
 議員側も実は行政職員の持っている知識量や情報量をそのうち知ることになるので、「先生、先生」と言われていることに、「まぁ、そういう態度で来るなら、いいかぁ」と思い、要望や提言が実現できなくとも妥協するようになって鋭鋒が鈍ることになってしまいます。

 そんな議員でいいと思うのなら、それがその自治体の議員のレベルだと思うのですが、私は議員はもっとしっかり仕事をすべきだと思います。

 先日、京都で「橋下徹講演会」が開催されたので参加してきました。
 いろいろなお話があって参加して大変意義深いものだったのですが、質問者に対する回答の中で、議員報酬くらいを稼ぐ力がない人はそもそも議員になっても仕事ができないという趣旨の話がありました。議員の座にしがみつくのは多くの政治家が民間ではそんなに稼げないからと。



 主に国会議員の話が中心でしたが(国会議員は年間5千万円強の報酬がもらえる)、地方議員もそれほどではないものの高い報酬や名誉があり、離れられない人が多いという見解を述べておられました。
 私もこの点同感で、大津市議会議員も現在月額56万円、年収にすると約900万円ですが、民間企業で実際にこれくらいの額を“稼ぐ力”がある人が議員になるべきだと私も思います。

 実際に900万円の年収をもらっている人がなるべきというのではなく、900万円は民間でも“稼ぐ力”がある人がなるべきだという考えです。
 そうでなければ、専門性が高い行政職員と対等に話はできないだろうし(話をいなされて終わり)、要望や提言の実現からはかけ離れた存在のまま議員任期の4年間を無為に過ごすことになると思います。また付け加えると大津市議会議員は当然ながら議員秘書はいませんので、雑用からなにから全てを自分でやる必要があります。単にまちのイベントに顔を出して「おめでとうございますーー」と言うのが仕事ではなく、志や想いを持って、市民の声を踏まえて、要望・提言を実現すべく活動することが求められています。

 私が見る限り、実際に行政職員が議員だからと言って遠慮することなくと対等にディベートしてきたときに(自分の関心領域に限ったとしても)、しっかりと議論できる能力資質を有した議員はどうなんでしょうか、実際のところ5、6人くらいじゃないかと思います。

 そんな政治家(候補者)の見分け方・見抜き方ですが、やはりブログやSNSで政治家や候補者が発信している情報を頼りに判断するのが一番分かりやすいかもしれませんし、インターネットで検索してその人物の専門性が分かる(表彰や論文執筆など)ようであれば、そうした事でも判断できると思います。

 ただ専門性というのも、本当に地方議員の仕事に役立つのかという観点から、見直す必要もあります。全く地方政治には役立たないだろうという分野の専門性を持っていても、実際の政治活動にはなんら役に立ちません。 

 また現職議員の場合は、実際にどのように要望や提言を実現してきたのかをチェックすることで見分けられると思います。この場合に重要なのは、本当にその人のやった行動が、結果・成果につながっているのかどうかです。

 単に議会で要望を伝えたくらいのことでは能力・資質の証明にはなりません。
 行政もその同じ方向性で議員に言われるまでもなく実行しようとしていた政策・施策であるケースは多く見られますし(議員も自分が提案したことが実現したという事例作りによく使う手では、行政に今後やる事業を確認した上で、その事業実施を提言するなど)、たまたま行政がやることになったケースや、他の議員や団体の働きかけで実行するようになったケースも考えられます。
 要は実現した事柄が、本当にその議員の手柄によるものかどうかは、よくよく疑問を持ってチェックしなければならない問題です。

 そんな時に効くキラー質問は、「○○を実現したってあるけど、あなたはどんなことをしたの?」です。もう少し聞けるようなら、「あなたがやったアクションをもう少し具体的に教えて」とかだと思います。


 統計分析の知見がある方ならわかりますが、「原因➡結果の因果関係」を明らかにするのは本当に難しいです。逆の因果関係や単に相関性があるだけ、又は疑似相関の可能性もあります。もしくは、原因(議員の行動)は結果(実現したこと)にほとんど影響を与えていない(有意性が無い、ほとんど要因として考えられない=決定係数が極めて低い)ということも考えられます。

 とはいっても実際にその政治家(候補者)の「能力」「資質」を見分けるのは難しいかもしれません。
 その時は、「想い・志」とは切り離して、その人物の「能力・資質」に目を向けることかもしれません。「想いはすごく感じられるけど、よくよく考えてみると能力・資質はどうなんだろう?」と。民間企業でも「年収900万円の仕事ができる能力を持っているだろうか?」と。

 こんな時に疑問を持つかもしれません。
 「年収900万の仕事ができる人が社会的弱者の立場を理解できるのだろうか?」と。
 
 私は十分にできると思っています。名前は挙げませんが、社会にはそういう人はいっぱいいます。貧困やホームレスの問題に対応するためNPOを立ち上げてきた人、子どもの貧困問題に取り組むために団体や会社を作り活動している人。みんな900万円以上の年収は稼げる力を持った人ですが、しっかり社会的弱者の視点に立ち、社会課題に向き合って活動をしている人たちだと思います。




フジイテツヤ









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