雪から白鳥をさがす

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 私は議員である現在も、雇用労働問題を扱う会社代表の職に在ります。
 基本的なワイフワークの基軸は「安心して生き続けられる社会づくり」にあり、その実現のためには「社会保障制度の充実」が必要だと考えています。ただでさえ少子高齢化の影響で若年者や現役世代の負担率が増加傾向にある中、就職氷河期以後(1995年頃以後)に新たに就労し始めた世代は、雇用形態の別によってキャリア形成に大きな格差が生じてしまっています。
 非正規労働のまま30代、40代を過ごした人たちは、最近「中年フリーター」として社会問題化してきており、低所得・無貯金のままで「低年金の老後」を迎えてしまえば、多くの貧困世帯を生み出してしまうことになりますし、それは次の世代の社会保障負担の増大を招くという負の連鎖を生んでしまいます。
 こうした連鎖を断ち切るために、いまから16年前に一念発起し会社を創業し、社会課題に事業を通して向き合ってきました。さらにリーマンショック後は公共政策によるアプローチの重要性を痛感して地方政治にも関わってきました。
 今後も引き続き、「安心して生き続けられる社会づくり」を基軸にこれまで培ってきた経験、知識、人脈をフル稼働させて活動をしつづけていきたいと考えています。



(比良山系に雪が積もるいま、大津北部の景観は最高です)




 「一見無駄と思われるものも、実は無駄ではない。」

 十数年前、とある企業様の求人用ホームページの企画制作に関わらせて頂いた時に、インタビューした設計開発者の言葉が思い出されます。
 この設計開発者は、戦時中に「紫電改」という戦闘機開発に関わられた方で、その後は国内重工業メーカーなどで開発責任者などを歴任し、最終的には関西の技術者派遣会社の顧問をされていました。
 結果的にゼロ戦の後継機となった「紫電改」の開発は非常に苦労をされたそうで、どのように航空速度や格闘能力、航続距離を高めるかという問題を解決するために試作機から改良を加える際、無駄なものをどんどん外していくという方向性に在りながらも、「無駄と思っていたものが、全体最適の目線では実は無駄ではなかった」ことが多かったと述べておられたのが印象的でした。

 ある視点から物事を視ると無駄にしか見えないものが、より広い見地から観ると必要な部分であるということは、モノづくりだけではなく、人づくりにも当てはまることかもしれません。

 就職氷河期以後、新卒で正社員就職ができずに、非正規労働で働く人が増えてきました。公共政策としては、正社員就労を目指して各種訓練制度や助成金制度を設けて対応をしてきました。もちろん一定の効果があったものと考えていますが、それは「スキルの底上げ」という視点からの施策であったように感じています。
 
 それはそれで今後も推進すべき施策であることに変わりはありませんが、私は「スキルの顕在化」も、非正規労働者の就労支援にあって同時に取り組むべきだと考えています。
 「スキルの顕在化」。つまり、これまで評価されてこなかった知識・経験をスキルとして目に見えるものとしてスキル化していくという取り組みです。誰もが無駄だと思っていた知識・経験も、違う視点から観ると無駄じゃないどころか「凄いスキル」だと認識されることもあり得ると思うのです。

 昨年卒業した京都大学公共政策大学院では、研究論文の執筆に当たり、この課題の実証分析に取り組みました。具体的には「子育て」や「NPOなどでの活動」がビジネスにも通用するスキルの獲得につながっているのか?という研究です。
 研究結果は仮説が裏付けられ、「子育て」や「NPOなどでの活動」は、ビジネススキルやマネジメントスキルの向上に貢献していることが分かりました。

 就職氷河期以後、非正規労働を続けてきた方もすでに40歳代前半を迎えつつあり、65歳や70歳まで働く時代だとしても、あと30年近く低所得・無貯金の生活を続けるのは本当に大変だと思います。非正規労働で就労する方は、正社員で働く人に比べて婚姻率も低く(関連して有子率も低い)、生計費を自分だけで成立させなければならないことから生活基盤は極めて脆弱だと思います。この苦しい生活をこれから数十年続けることに、生きる価値を見出すことが難しい人もいるのではないかとも考えます。
 どんな人も他人とは違う経験・知識を持っているかもしれませんし、ビジネススキル化できる経験・知識を持っているかもしれません。そのようなアプローチからの就労支援も、これからは必要になってくるのだと感じています。
 

 地方政治に関わってきたこの8年間を振り返ると、どこまで「安心して生き続けられる社会づくり」に貢献することができてきたかは分かりません。地方議員、とりわけ市議会議員は学区単位、地域単位の課題に取り組むことが多い為、職務柄どうしてもローカルな活動に成果が収斂してしまう傾向があります。
 確かに学区単位、地域単位では「安心して生き続けられる社会づくり」に微力ながら貢献してくることができたと考えていますが、国や社会単位で見ると活動領域が狭いようにも感じています。

 とはいえ、そうした8年間の精一杯の市議活動も、もちろん無駄ではなかったと思います。
 ことわざで云う、“雪上に霜を加う”というものではなく、経験してきたすべての議員活動が新鮮で勉強になるものだったと実感しており、関わってきて頂いたすべての皆様に感謝の念を抱いているところです。今後は経験してきた議員活動の中から、雪中の白鳥を見出して次のステップにつなげていくことが大切だと考えています。

 
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 大学時代からの友人(竹本信介助教)が教鞭を執っている、立命館大学大学院公務研究科が来年度から政策科学研究科に吸収されることに伴い閉鎖されます。
 最終シンポジウムが今週末に開催されます。プログラムは、戦後行政学の権威である村松岐夫先生や、元官房副長官の古川貞次郎先生、加茂利男先生、水口憲人先生などの講演・パネルディスカッション、懇親会となっています。どなたでも参加可能ということですので、地方自治や公共政策に関わる方はぜひ奮ってご参加いただけますよう私からもお願い申しあげます。
 「終わりは始まり」。これまでの公務研究科での蓄積をベースに、なにかがここからはじまることを卒業生の一人として願っています。


立命館大学大学院 公務研究科HP


フジイテツヤ








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