大津市ガスの運営権官民連携化

ホームブログ>大津市ガスの運営権官民連携化



 現在開かれている大津市議会11月通常会議で、一番重要な議案は、議案149号「大津市水道事業、下水道事業及びガス事業の設置等に関する条例及び大津市ガス供給条例の一部を改正する条例の制定について」と、議案第171号「公共施設等運営権の設定について」の2本です。

 この2本の議案が成立することで、現在のところ完全公営で行われている大津市のガス事業は、民間(大阪瓦斯グループ)との共同出資会社における施設運営等へ移行することになります。




 ここに至る経緯としては、電力自由化に続いてガス自由化がなされ、これまで独占的に大津市域で運営してこられた環境から、他社との競合となり、収益性が低下してくる課題が顕在化していることにあります。収益性の低下は、ガス使用料金の増減に大きく影響を与えます。
 それ以外に大津市ではガス保安業務等を担う現場の技術職の採用が、最近ほとんどされておらず、今後の安定的にガス供給を行っていくにあたって技術承継や人材育成が課題ともなっています。

 大津のガス事業の経営状況をみると、私が知る限り、ずっと黒字経営です。それもかなりの黒字(数億円から十数億円/年間)となっています。これは幾つか要因があり、「大津市が購入するガス仕入れ量よりも、大津市が市民へ販売ガス量が多いという不思議な状況(勘定外ガス)」、「大津市とも関係が深い大手製造業(東レなど)の大口顧客の存在」が挙げられます。
 
 ガス事業の運営権官民連携化がなされるとすれば、これまで収益要因であった上記2件に加え、ガス仕入れ料金の更なる値下げを実現できるのでしょうか?
 仮に上記課題が官民連携化によって解決できるのであれば、今後も消費者である市民の生活に影響を与えるガス使用料金を低廉なまま供給できるでしょうし、解決できないのであれば消費者の生活に跳ね返ってくることになります。

 正直なところ、このあたりの判断が非常に難しいです。
 はたして本当にこのまま官民連携化を進めた方が、市民にとってプラスなのかマイナスなのか。このまま公営事業を継続した方が市民にとってプラスである可能性もありますし、いっそ大阪ガスに事業ごと売却した方が(運営権設定期間終了の20年後に売却するよりも)有利であるかもしれません。

 現在の大津市議会の各会派の検討状況や委員会採決の状況を見ていると、両議案とも可決することが見えていますが、私はまだ悩んでいます。一人の議員が仮に反対したからと言って、議案が多数決で可決されてしまえばそれで終わりなので、そこで思考停止してしまってもいいのですが、私としては何か腑に落ちていません。



 大津市議会に提供されている資料の一部を後々検証できるように残しておきたいと思います。
 ➡ 「大津市ガス特定運営事業等提案書類に係る全体収支計画書について」(PDF)
 ➡ 「大津市ガス特定運営事業等提案書及び添付書類」(PDF)
 ➡ 「大津市ガス特定運営事業等提案書類に係る確認事項への回答」(PDF)



 
 私なりの疑問点は、
 ① 収支計画の通り、本当にうまくいくのだろうか?とくに大口顧客(東レなど)の競合他社へのスイッチングを20年間ゼロにすることなどできるのだろうか?
 ② 収支が悪化した場合、ガス使用料金の高騰につながるのではないか?市が料金の上限設定をできるとしても民間資本が大半を占める以上、民業への規制は社会的に容認されにくいことから、上限設定はなし崩しとなるのではないか?
 ③ 施設等運営権が終わる20年後、ガス事業が売却されることは織込み済みと言えるが、買いたたかれることは必至と言える。公営継続や完全民営化の選択肢を現時点でもう一度、検討してみることも必要ではないだろうか?
 以上3点です。

 なお上記以外に、今回のガス事業官民連携化は、水道事業の官民連携化を見据えたものともなっています。この点も留意しなければならないと考えています。

 今週末に本会議で採決が行われます。
 教育長人事案も非常に重要ですが、このガス事業の運営権官民連携化に関する議案は、それ以上と言っても過言でもないくらい、市民生活への影響があります。行政や提案企業の提案を鵜呑みにすることなく、専門性を有した方との意見交換や、関係者からの意見聴取を独自に行い、自分なりの判断をしたいと考えています。


フジイテツヤ






 

▲ページのトップへ