大津市の「新しい住民自治組織(まち協)」に対する支援案は十分か?

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 はたして、行政が素案で示した大津市の「新しい住民自治組織(まち協)」に対する支援は十分なのでしょうか??

 結論から言えば、とても支援は十分とは言えません。
 

 大津市ではご存知の通り、小学校区単位で学区自治連合会(自治会、町内会のとりまとめを行いながらも、行政からの依頼や要請を自治会、町内会へ依頼・伝達する任意組織)があります。
 この学区自治連合会が、これまで住民自治を担ってきたわけですが、自治会加入率が低下しており、現在は40%近くまで落ち込んでいます。新住民や地域の枠組みにとらわれない世代が増えたこと、ライフスタイルの変化等が関係していると考えます。
 
 こうした状況下で、自治会未加入者も含めた地域に住む人たち全員で構成する「学区単位のまちづくり協議会」を設立し、地域のまちづくり計画を策定し、その計画に沿ってまちづくりを進めていこうとする動きが出てきています。この新しい自治組織が「学区単位のまちづくり協議会」です。
 
 この「学区単位のまちづくり協議会」の運営には、事務局(人件費や福利厚生費など)や諸経費(光熱水費や消耗品費、通信運搬費や公租など)がかかってきます。これまで大津市では、各小学校区単位である支所が学区自治連合会が行う活動のサポートを実質的に担ってきました。
 
 今般の支所統廃合を含む市民センター機能等あり方検討において、支所機能が統廃合されてなくなってしまう地域で特に反対の声が大きいのは、この地域自治機能を自立的に担うことが求められることもあると考えます。(その他にも勿論、行政手続きができなくなることや、防災上の懸念などもあります)

 この「学区単位のまちづくり協議会」の設立に向けて、大津市内でも順調に準備を進めている学区もあります。その一つが、平野学区です。平野学区では平成28年5月に「ひらの円卓会議」を立ち上げ、年3回程度の会議を開き、また「ひらのまちづくり計画」の策定も進めようとしています。市行政も協働提案制度に則ってこの動きを財政的に支援しています。
 平野学区は私が1歳から12歳まで住んでいた町で、いまでも愛着があり、市内随一の住みやすい環境が整備されていると感じています。
 平野学区が進めようとしている、「学区単位のまちづくり協議会」に関する動向も、試行錯誤がなされている段階であり、運営上の課題も挙がってきていると学区関係者から聞いています。いずれにせよ、現在も行政が財政支援を行い設立準備が行われており、こうした支援無くして、まちづくり協議会の設立や、円滑な運営は難しいと言えると考えます。
 (学区内に競艇場があり臨時的収入が見込める長等学区などはすでにまちづくりを担う非営利組織(NPO)を設立しているなど、行政の支援を受けずとも比較的スムーズにまちづくり協議会が設立されるのではないかとも聞きますが、そうしたケースは例外と考えた方がいいと思います)
 
 行政が言うように、地域自治力を高めていくために、「学区単位のまちづくり協議会」を設立し、実際にまちづくりを担っていこうとすると、まずは事務局費や事業費がかかってくるわけで、これらをなんとかしなければなりません。

 自治会加入率が下がってきている理由として、役に当たるのが嫌だという人や、自治会費を支払うのが嫌だという人がいるなかで、新たに「学区単位のまちづくり協議会」でも、構成員が役を引き受けたり、会費を支払うのであれば、これまでの自治会と変わりない組織になります。
 行政から自立しながらも、構成員(学区内の全ての住人)に対しても自治会のように労力負担や経済負担がないような形で、事業を進めていくということは、ここに文章として書く以上に非常に大変な事柄である実感を覚えます。


 前置きが長くなりました。 
 結果的に、行政が「まちづくり協議会」の設立や運営で財政支援を行わなければ、まちづくり協議会は成り立ちにくいのではないでしょうか


 大津市が参考としている草津市では、以下のように「まちづくり協議会」に対して、財政的な運営支援・事業支援を行っておられます。



 「まちづくり運営交付金」というものを、人件費分として措置し、この交付金を活用し、まちづくり協議会は事務局運営を行ってこられました。また、まちづくり協議会単位での事業に対する交付金(地域ふるさとづくり交付金、がんばる地域応援交付金。いずれも事業費の10/10が対象)を用意しています。
 これら運営に対する行政から、まちづくり協議会に対する交付金は、市民センターの指定管理が始まるまでの5年間で学区ごとに約2500万円支払われており、市民センター(地区まちづくりセンターに改称)の指定管理者になってからは、300万円超の交付金に加えて指定管理料として人件費3人分(約1100万円)を合わせて1400万円程の財政的支援が、学区単位のまちづくり協議会になされています。


 これに対して、大津市がどのように考えているのかというと・・・


大津市市民センター再編素案の25頁目)


 
 大津市では、設立支援交付金が最大40万円と、運営支援交付金が年間20万円(3年間で60万円)と、最大でも(たったの)100万円の財政措置にとどまります。(※草津市は2500万円)
 さらに、運営支援交付金は、2023年度(平成35年度)には廃止されてしまいます。。
 
 2023年度以降は、「一括交付金」という、すでに学区自治連や体育協会、社会福祉協議会に対して行われている交付金をひとつにまとめて支払われるものだけになってしまうのです。
 ※ちなみに草津市では、「まちづくり協議会 運営交付金」や、「がんばる地域応援交付金」、「地区まちづくりセンター指定管理料内の人件費(3人分)」以外に、「地域一括交付金」が支払われています。
(下図参照)


 

 大津市と草津市の、まちづくり協議会が地域公民館を指定管理するまでの自立支援に対する財政措置は、明らかに差があり、大津市はスケジュールの面でも、そして財政面でも、学区単位のまちづくり協議会に対する支援は不十分であると考えられます。

 越直美さんは、勝手に地域の住民自治のあり方に介入し、十分な支援も行わないうちに、コミュニティセンターの指定管理の受け皿として利用しようと画策しているのです。

 行政主導で、まちづくり協議会を設立しても、十分に事務局や事業運営が機能しなければ、その地域は大変なダメージを受けることになります。そうしたことが分かっているからこそ、交渉のカウンターパートにまちづくり協議会の担い手となる学区自治連合会の集合体である「大津市自治連合会」を重視し、法律(請願法)違反のリスクを背負ってまで、市行政は強引に合意形成しようとしているのでしょう。

 大津市は、まちづくり協議会を条例設置の団体として位置付け、単なる任意団体なら担う事ができないはずの公共施設の指定管理者にしようとしています。
 これを議決するのは、確かに市議会でありますが、実際にまちづくり協議会が設置されるかはその学区自治連合会の考え方次第だと思われます。
 少なくとも公民館自主運営事業に参画している学区や、まちづくり協議会設立に向けて準備を進める平野学区などの複数学区がまちづくり協議会設立に動けば、おおよその流れはできてしまいます。そうしたことを行政は狙っているはずです。

 行政としては、任意で設立可能(設立しても設立しなくてもいいですよ。その学区次第です)という考え方で、「大津市自治連合会」に対してアプローチをするはずです。この時に、「大津市自治連合会」が、まちづくり協議会に対する運営や事業交付金などの面で、十分な財政措置の確約を得られずに合意してしまうか、またはアプローチを突っぱねるかが、非常に重要な契機になると考えらえます。

 現在、大津市自治連合会は、総意として「すべての支所を残す」ことを決めています。
 大津市議会も同様に「すべての支所を残す」ことを公共施設対策特別委員会において意見をとりまとめています。

 先の記事にも書きましたが、市長選挙のスケジュールに左右されることなく、大津市の住民や議会は、この問題をジブンゴトとして捉えて、決めていかないといけません。
 私自身は、廃止予定の支所も、3人程度の職員が常駐する「出張所」として残すことが、財政的な側面からも、まちづくりの視点からも、現時点でベストだと考えています。
 


フジイテツヤ



 

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