行政手続き拠点としての支所の存在意義について。

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 6月15日の「広報おおつ」の表紙です。



 証明書発行及び届け出件数が一貫して減り続けているので、支所も減らしていかないといけないのでは?という論調です。公募市民との意見交換会や、社会福祉協議会などの各種団体との意見交換会、先日行われた生涯学習センターでの定員500の会場での参加者約50人の市民向け説明会でも、同様のスライド資料が使われて支所統廃合の背景説明をしています。

 しかし何か変だ!
 (心の中で強い疑問を感じる私がいる。)

 なぜ、1995年から1998年にかけて、一気に行政手続き件数(証明書発行数、届け出件数)が減っているのだろうか?本当に支所における行政手続きはこんなにも減っているのだろうか。高齢化率が高まり高齢者にとって身近な支所での相談は増えている印象さえ受ける中で、この数字は正しいのだろうか?

 自分が感じる疑問を解消すべく、データを取り寄せることにした。
 以下は大津市行政から提供してもらった1988年以降の「証明書発行数、届け出件数」と、支所数、そして人口推移をグラフにまとめたものである。




 なんと1995年と1996年だけ突出して行政手続きが多くなっているではないですか!
 1988年~1994年は5万件余りで、1997年から2007年くらいまでの5万件余りと大きな違いはない。「広報おおつ」の表紙に使われていたのは、外れ値とも言える1995年の突出したデータを基準年にした印象操作を狙った資料なのではないだろうか?


 また、行政手続き件数が何と関係しているのかを回帰分析で考えてみることとした。
 というのも、私自身の仮説としては1995年前後に行政手続き件数がピークを迎えたのは、バブル崩壊後に土地が安くなったことなどによる不動産流通件数が増加したことが主原因ではないかというものである。
 回帰分析の結果は、まさにその通りだった。人口推移や日経平均株価と、大津市の行政手続き件数とは因果関係は見られなかったが、全国不動産登記件数とは強い因果関係が見られた。
 つまり、1995年前後の行政手続き件数は特殊要因に帰するものであると同時に、全体的に行政手続き件数は不動産流通などの社会情勢に依るものだということ


 * * *

 ここでもう一つ疑問がわく。
 不動産関係の届出は業者が行うものだろうし、それならば支所でなされるのではなく、多くの場合は本庁(市役所)でなされるのではないだろうか??
 そこで本庁(市役所)と支所の業務にはどのような違いがあるのかを調べてみることにした。市民センター機能等あり方検討を行ってきた大津市調査資料の中に探しているデータの一部があった。以下の通りである。



 ずばり不動産関連の届出業務量を比べたものではないが、保険年金業務と介護保険業務について、本庁(市役所)と支所ではどの程度の比率でなされているのかというものである。

 この図から分かることは、生活に密着した保険年金業務や介護保険業務などで支所の利用率が高く、地域住民(とりわけ高齢者)から必要とされているのではないかということである。すなわち本庁と支所とでは明らかに担当する行政手続きに違いがあるのではないかということ。

 * * *


 そこでようやく気が付いた。
 大津市行政が示す「証明書発行及び届出件数」というのは、本庁(市役所)+支所の合算の数値だということ。(恥ずかしながら、今までは支所だけの件数だと勘違いしてました)

 もしかしたら、支所ではそんなに行政届出件数には極端な変動はなく、人口増加や高齢化率の高まりによって、逆に支所の取扱い件数は増加か横ばい傾向にあるのではないだろうか?という疑問が新たに湧いてきた。


 そこで、本庁(市役所)と支所との行政手続き件数を比較したデータを探してみた。
 しかし公表されているデータは限られていた。かろうじて2013年度と2016年度のデータが見つかった。以下の通りである。



 2013年と2016年のデータを見比べて明らかなのは、支所での件数がほぼ横ばい(3%減)である一方、本庁(市役所)での取り扱いが28%も減少しているということである。

 この2か年のデータだけでは断定することは難しく、あくまで参考資料として述べるならば、「支所での証明書発行及び届出件数には大きな変動はないのではないか?」ということである。
 
 不動産流通による社会変動などの影響は、本庁(市役所)がバッファとなってカバーし、支所はその地域に住んでいる人の身近な行政手続きや相談を行っているのではないかと考える。

 大津市が出しているこの資料も、印象操作を狙ったものではないか?
 もしどうしても「証明書発行及び届出件数と支所数」を比べたいのであれば、少なくとも「支所で行われた証明書発行及び届出件数」と支所を比べなければならない。(そして可能であるならば、企業が行う行政手続きを省いたものだけをカウントしたデータと。)

 行政が言うように、行政手続き拠点としての支所の存在意義が薄まってきているというのは、間違った考え方であり、本当は、住民にとって支所の必要性は高まっているとは言わずとも、”変わらない”という程度のものであろう。
 確かに今後はマイナンバーカードの普及や、行政手続きの電子化によって、支所における取扱件数も減ってくるかもしれないが、マイナンバーの普及状況や行政手続きの電子化がほとんどなされていない現状を見ると、それが今後3、4年で急速に進むとも考えづらい。代替手段として各種証明書のコンビニ発行や、電子申請化を検討するのであれば、具体的に代替手段をどのように実現していくのかを、行政は提示しなければならないのである。

 参考:図表作成に用いた基礎資料(エクセルデータ)


藤井テツ






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