京都大学公共政策大学院に通って②。

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京都大学公共政策大学院 入学式

 大学院から合格通知を頂いた頃、古傷を痛め、手術・リハビリをすることになりました。
 ともあれ大学院において学ぶこととなりましたが、私も大学時代は政治学を専攻していたこともあり、最初の時分は復習する内容が多かったように思います。
 またごく初期の頃は、足の怪我の影響でろくに歩くことや車運転することさえ支障が生じていたので、大学院に通う頻度も少なく、議会活動優先の中で、2、3回続けて休まざるをえないこともあり、さすが京大、なかなか付いていくのが難しい状況でした。

 そんな時助けてくれたのが、同じく地方議員の立場で京大公共に通っていた2人の議員の存在です。枚方市議の木村さんと、貝塚市議の平岩さんです。足の怪我のため飲み会も参加できず大学院では孤立仕掛けていましたが、なんとかこの2人の議員とは繋がりを持てて、一緒に学期末の単位認定試験の勉強もしたりしました。

 大学2年目を迎えると、ようやく自分の採りたい科目を登録することができてきました。
 大学院といえど、結構単位を取得しなければなりません。2年間で48単位ということなので、半期で12単位(6科目)のペースで取る必要があります。社会人学生で議会との兼ね合いもあることから、どうしても1週間のうち2日、3日間に授業を集中させる必要があり、必ずしも採りたい科目だけを登録できるわけではなく、1年目は卒業のためにはちょっと興味分野から外れているものも取らざるをえませんでした。

 ただ2年目以降、特に2年目の後期は、研究論文の作成と、本来やりたかった統計分析に関する勉強に時間を傾けることができたように思います。
 大学院に行ってよかったことの一つとして、「考える時間」を取れること、そしてその環境があることだと思います。考える場所として、「図書館」があり、2年目の後期はずっと図書館に入り浸っていました。調べれば調べるほど、いろいろな資料が大学図書館にはあります。そして資料を読みこめば読み込むほど、一般書ではなく専門書へ引き込まれ、統計学がわかるほど、近年の専門書も読み込むことができるようになっていきました。



 京大図書館は蔵書が少ないそうですが、他の大学図書館を知らないので比較はできません。私としては考える場所として非常に重宝できました。大学院に行って勉強するのであれば、この図書館の存在は大きいと思います。
おそらく2年間で100冊以上の専門書を借りて読んだと思います。知識のバージョンアップには大いに貢献できたと感じています。

 また授業のレベルですが、これはピンからキリだと思いました。
 ほとんど知っている事柄(社会人学生だからだと思いますが)を、改めて述べられるばかりの授業もあれば、毎週のように専門書を読んでレポートの提出を求められる授業。実は学生の間には、裏シラバスというものが出回っていて、これを回し読みさせていただき、どの先生の授業がタフであるか、授業出席が実際どれくらい単位取得に関係するか見たいなことを分かった上で、授業を選択していくことになります。

 しかし一番の難関は、「実践科目」に指定されているもので、英語メインで行われる科目、もしくは統計学に関する科目で構成されており、私の場合は英語系の科目を回避したので統計学系の科目だけでこの「実践科目」6単位の取得をしなければならないことでした。
 統計学はかなり奥深いです。実際に現場で使うものは、統計分析の回帰分析などに限られますが、それを理解するために統計学の基礎を学ぶことになります。この統計学の基礎がかなり難しく、数学は高校以来やったことがなかったので、最初は平方根などから復習する必要がありました。2年間かけてようやく統計学については基礎の基礎が理解できて、そしてようやく統計分析の手法(回帰分析)なども基本的なものはマスターできたように思います。





 特に面白かった授業を取り上げるならば、元総務省官僚の小西特別教授(公共政策大学院)による「政策評価・行政評価」や、トマ・ピケティ「21世紀の資本」を詳細に分析した宇仁教授(公共政策大学院)による「社会経済学」、統計学の基本の基本を学ぶことができた浅野教授(農学研究科)の「政策分析のための統計基礎」のほか、建林教授(公共政策大学院)の「政党と選挙」、松井教授(経営管理研究科)の「統計基礎理論」、公共政策大学院長の中西教授の「安全保障概論」などです。
 経済学も知らなかったので、その基本を分かりやすく敦賀准教授(経済学研究科)に学べたことも良かったですし、実証的な観点から政治構造を曽我教授(公共政策大学院)に学べたことも良かったです。
 上記記載した通り、公共政策大学院のもう一つの良さは、公共政策にかかわる様々な分野の専門家が集まっていることにあります。政治学や行政学だけではなく経済学、公共経営学、社会学、教育学、農学などなど。

 京大公共は社会人学生にとって十分配慮がなされているかといえば、はっきり言えばNOですが、計量分析(統計)を中心に、実践的な力を身に付けたい公共職業人にとって、オススメの大学院だと感じます。
 入学当初は「専門性を身につけたい」と思い入ったわけですが、卒業して思うことは、「専門性を高める」ことができる教育機関だということです。もともと私の場合は雇用問題や人材育成に興味関心があり職業生活を通じて知見を広めてきたわけですが、そうしたこれまでの経験を一定の専門的レベルまで高めることができたと考えています。
 そうした意味で、やはり普段から職業生活を頑張っている人にとっては、価値があるものだと思いますし、単に学歴が欲しい人や曖昧な動機でキャリアアップしたいと考えている人にとっては、無為な2年間になってしまうかも知れません。

 仕事の合間を縫って、家族にも我慢してもらって、また高いお金を払って(2年間で学費等入れて100万円程度)通うのは、結構高いモチベーションが必要です。社会人学生の中には、やはり途中リタイアしてしまう人もいます。しかし、それでもなお、高い目的意識を持つ方には、ぜひともチャレンジをしていただきたいと思っています。


藤井テツ




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