【一般質問解説④】大津市の原発に対するスタンスは?

ホームブログ>【一般質問解説④】大津市の原発に対するスタンスは?



 エネルギー問題は非常に重要であると考えています。
 そもそも第二次世界大戦、特に日本が戦争への道に踏み込んだのはエネルギー問題であったと思います。エネルギーをいかに安定的に供給していくのかは、安全保障体制と並び、国の根幹を揺るがす大変重要な課題だと思います。

 大津市は、越市長は原発反対の考えを定例記者会見などの場で述べてきましたが、大津市としてはどっちつかずの姿勢に思えます。また、放射性物質の危険性は正しく理解されないと、下手に不安ばかりを助長するものとなってしまいます。
 大津市では独自に策定した大津市防災計画・原子力災害編においても、市民に対して、人の健康や環境面に及ぼす影響についてわかりやすい情報提供に努めるものとすると記載しており、国や県頼りではなく、主体的に取り組まねばなりません。

 最近、市民請願や意見書で毎回のように、原発問題が取り上げられていますが、大津市のスタンスはイマイチ明らかになっていないように感じました。議会でばかり議論するのではなく、一度しっかりと大津市のスタンスも聞かねばならないと考えて、本会議一般質問で取り上げることにしました。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

質問者:藤井哲也(太字)
答弁者:上野総務部長

 主に原発災害に係る防災対策についてお伺いしてまいります。
 本市に最も近い原発は大飯原発でありますが、その3号機、4号機については、原子力規制委員会による新規制基準に基づく審査や工事計画と原発の運用ルールの認可審査が必要で、本年5月に審査に合格していることから、大飯原発そのものについては再稼働の条件をクリアしているものと個人的に考えています。
 しかしながら、昨今の北朝鮮の動きは不透明でもあり、実際、福井県では、原発への攻撃を想定したリスク分析も行っているなど、本市においても万一の事態に備える必要はあると考えます。
 今回、原発や放射線に対する本市見解を確認するとともに、本年度改定予定の地域防災計画や避難計画が市民にとってプラスになるものを願い、以下、質問を行いたいと思います。
 まず、原発及び放射線のリスクに対する本市の見解についてお伺いいたしますが、このたび南相馬市立総合病院の勤務医で南相馬市の放射線健康対策委員会委員も務める坪倉正治氏による研修会に参加してまいりました。放射線に関する基本知識を学ぶところから始まり、放射線被曝による健康被害などについて科学的、統計的な観点から、自治体議員として知っておくべき有益な知識や情報を得られたと考えています。
 坪倉医師によると、福島の原発事故による放射線被曝を直接の原因とするがん死亡者はゼロとのことでありますが、避難時や避難先での衰弱や肺炎による死亡、または風評被害による将来に悲観して亡くなった方が多く、最近では生活習慣が一変したことから、男性独身高齢者が生活習慣病になって亡くなることが多いなど、間接的に事故が影響しているとのことでありました。
 また、原発作業員の年間被曝量の基準とされております100mSvは、一生涯の発がんリスクを0.5ポイント高め、もともとの一生涯の発がんリスクが30%であるならば、それを30.5%に高める影響はあるものの、それ以下の被曝量では生活習慣病による発がんと区別がつかなくなるとされています。ちなみに、原発従事者を除き、福島原発事故では、放射線を最も被曝した方でも100mSvには達していないとのことであります。もちろん、原発事故による健康被害のリスクは過小評価すべきではありませんが、逆に過剰反応もすべきではないと言えます。
 本市においては、現行の地域防災計画において、放射線や緊急被曝等に関する専門家の監修のもと、放射性物質が人の健康や環境面に及ぼす影響についてわかりやすい情報提供に努めるものとすると記載があります。続いては、本市は放射性物質が人の健康や環境面に及ぼす影響についてどのように考え、今後どのようにわかりやすく情報提供を行っていこうとするのか、国の原発政策への評価もあわせて見解をお伺いいたします。
 続いて、避難計画及び受援計画についてであります。
 また、坪倉医師によると、70歳代以上の方の避難所での死亡率は、通常の3倍程度であったことなどから、避難所の受け入れ体制が整わない段階での避難は、かえって死亡リスクを高めることになりかねないとのことであります。
 あくまで被災地で医療に関わる一人の専門家の意見ではありますが、傾聴に値すると感じました。
 続いては、原発事故に限らない話ではありますが、大規模災害における避難計画の改定や受援計画の策定に当たって、避難後の健康管理や孤立化につながらない体制整備も含めた総合的にリスクを評価し、必要な対策を講じる計画づくりがなされることを期待したいと思いますが、本市の見解をお伺いいたします。


 御質問にお答えします。
 原発及び放射線のリスクに対する本市の見解についてのうち、1項目めの放射性物質が人の健康や環境面に及ぼす影響についてでありますが、人の健康面については、放射線を浴びることにより、がん発症リスクが高まるほか、神経障害、不妊障害など多くの影響があると認識しており、また、環境面においては、琵琶湖の水質汚染による飲料水摂取制限、漁業被害、また土壌汚染による農作物への影響等があると認識しております。
 次に、市民への情報提供についてでありますが、平成27年度の大津市原子力災害避難計画策定時に放射能やその影響について避難対象区域での説明会を実施したほか、市ホームページ、「広報おおつ」にも掲載し、市民への情報提供をしましたが、今後もさまざまな広報機会を捉え、わかりやすい情報提供に努めてまいります。
 次に、国の原発政策への評価についてでありますが、原子力発電から再生可能エネルギーへの転換を図り、原発によらない社会の実現を目指すべきと考えます。
 また、国において、原発の再稼働がされることについては、市民が原発の安全性に不安を持っている状況では、原発は再稼働すべきではないと考えております。
 次に、2項目めの避難計画、受援計画策定における避難後の健康管理、孤立化への体制整備についてでありますが、本市では、地域防災計画で避難所での保健衛生指導、巡回相談、要配慮者へのケア活動等を実施することとしていますが、大規模災害時には、人員が大幅に不足するため、市災害時受援計画の中で、保健・医療スタッフの確保、受援体制についても定めていくほか、市原子力災害避難計画においても、必要な項目を追加してまいります。
 以上、答弁といたします。

 再質問いたします。
 まず、1項目めです。原発及び放射線のリスクに対する見解についてでありますけれども、発がんリスクであったりとか、あと農作物への影響などもお話しされましたけれども、そもそも本市の見解としまして、閾値、これ以上、例えば国の定義では100mSvを超えたら健康の被害が実際あると、また、農作物等の影響、内部被曝の影響ですけれども、これについても、具体的に言えば、かなり影響としましては少ないのではないかというふうに言われています。
 本市としまして、そういう国の定義に関しましては、どのような見解を持ってらっしゃるのかについて、まず1点目、お伺いしたいと思います。
 二つ目は、安全性に不安を持っている段階では動かすべきではないというふうな見解であります。そもそも本市としましては、原子力規制委員会による新規制基準等による審査、これで十分だと本市自体は考えているのかについてお伺いしたいというふうに思います。
 以上です。


 再度の御質問にお答えいたします。
 放射線の数値についての見解でございますが、我々大津市においては、専門的な見地ということにおきまして、国の機関等の数値を参考に同様の判断をしております。議員御質問の中でも、先生もおっしゃっておられる100mSv以上か未満かというところで体への影響があるかないか、また、その100㎜を超えた場合、100㎜の場合、がん発症率がどれだけかということにつきましては、0.5ポイント上がると、同様の認識を持っているところでございます。
 2点目の安全性に不安を持っていることに対して、原発の再稼働を認めるべきではないということにつきましては、これは、市民の目線、市民の思いでもって不安を持っておられる段階では、やはりこれはもっと説明を国として機構としてされるべきであるというふうに考えておるところから、そういった考え方でございます。国が定めた安全基準について、意見を述べているものでは、直接はないと思ってます。
 以上、答弁といたします。

 再問です。
 二つ目にお答えいただいたものなんですけれども、本市自体は、その新規制基準は合理的なものであるというふうに考えているのか、これを通れば問題ないというふうに考えておられるのかについてお伺いしてますので、その点についてよろしくお願いいたします。


 再度の御質問にお答えいたします。
 これは、専門的な機関が専門的な判断でもって、見地でもって基準を設けられて御判断されているものでございますので、大津市がそういった国の専門的な機関のそういった考え方に対して、別の意見なり、同様の意見を持つかどうかというところの知見は持ち合わせておりませんので、それに対する考え方はございません。
 以上でございます。

 再問です。
 ということは、新規制基準は問題ないというふうな認識で私は捉えさせていただきました。
 その上で、初問にもあったんですけれども、正しく情報を市民等に伝えていく必要については、本市自体も述べておられますし、既にされておられるところではありますけれども、必要に応じて適宜行っていく必要があるというふうに考えますけれども、どのようにお考えなのかお伺いしたいと思います。


 再度の御質問にお答えいたします。
 もう既にホームページで掲載しておりますので、広く一般の市民の方にはそういったところを通じて周知を進めてまいりたいというふうに考えておりますが、特に大津市が原子力の避難計画を持ち合わせております対象学区については、今年度から順次、避難ルートごとに対象に避難訓練を実施してまいります。
 それに合わせて、各学区に対して説明を今年度も行って、昨年11月に行ってまいりましたが、今後も引き続いて対象の5学区に対して、順次、説明を丁寧にやってまいりたいというふうに思っております。
 以上、答弁といたします。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎

 明らかになったことは、本市は住民が不安だから原発再稼働に反対の立場。
 放射性物質のリスクについては国と同様の考え方であり、100ミリシーベルトの被ばくで0.5ポイントの発がんリスクの向上があるという考え。(国の見解は、100ミリシーベルト以下の被ばくは、統計的に有意ではなく健康被害があるのか分からないというもの)
 こうした大津市の考え方をホームページでも公開しているほか、原発災害の避難対象区域住民に対してはこれまでも説明しており、今後も避難訓練などの際に丁寧に説明していくということ。
 原発の新規制基準は問題無いという立場。あくまで住民が不安だから再稼働反対。
 
 ということです。
 リスク管理の面では大津市は問題ないと考えている以上、不安に感じている住民への説明を国や県などに押し付けるのではなく、大津市自らが今後も説明を尽くしていく必要があります。
 私自身は決して原発推進の立場ではなく、フェードアウトが必要だという考えにたっていますが、気候変動リスクを考えると、今すぐの原発ゼロは難しいと思います。そうであれば、安全性が確認された原発の再稼動はやむをえないとも思います。

 ちなみに10月19日に予定されていた葛川学区、伊香立学区での原発災害避難訓練は、台風によるダメージが残っていることを考慮して「中止」が決定されました。
 自然災害による影響であるとはいえ、地域住民にどのように原発や放射性物質のリスクについて丁寧に説明されるのかを、確認する機会だと捉えていましたので、訓練が中止されたことは残念です。改めて時期を見て訓練が実施されるように要請をしていきたいと思っています。


大津市議会議員 藤井テツ





▲ページのトップへ