【一般質問解説①】越市長の政治スタンスは?

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 大津市議会9月通常会議(9月開会の議会なので9月通常会議と呼びます)も閉会して、衆院選挙も終わりひと段落してきたところで、取り上げました一般質問を順次解説を交え、アップしていきます。まずは第1問目「越市長の政治スタンス」について。
 越市長は、民主系のカラーが強いのですが、進めようとしている政策は民主系のものではないように感じます。そこで誰も市議会で聞いたことがない質問、「越市長はどのような政治スタンス」であるのかを聞きました。以下少し長いのですが、興味ある方はご覧くださいませ。なお、質問および答弁の文言は仮会議録段階のものです。

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質問者:藤井哲也(太字)
答弁者:越市長

 1項目めは、越市長の政治スタンスについてでございます。
 地方議会は、憲法により議決権が認められているとはいえ、地方自治体運営において地方公共団体の長たる首長の裁量の幅は大きく、また地方への権限移譲が進む中で、その影響力が増してきていることは、国会議員経験者が相次いで地方首長選挙に挑戦していることからも明らかであります。
 現下のそうした首長権限の高まりは、首長の政治スタンスや行動が市民、県民生活の質に直結することから、よい方向に働けば問題ありませんが、悪い方向に進めば市政を回復するのに多大な時間と労力が必要となる点で、長所、欠点は並立しているとも言えます。地方自治の進展を今後も進めていく上でも、現在、首長に課せられている使命や期待は大変大きいと考えます。
 本市では、2012年の市長選挙において、現在の越市長がリベラル的な政策を打ち出し、当時勢いがあった民主党、また労働組合、公務員組合によって形成される連合滋賀、対話の会や社民党などの支援を受け、当選をされました。しかし、いじめ問題が発覚した際には、混乱した市政を市議会が主導して事態収拾を図ったり、その後は市長自らが選任した副市長、教育長と意見対立し、自治体運営にとって貴重な人材を失うなど、市民視点から見て行政運営は大変不安なものであったように感じます。
 その後、いじめ対策や保育所増設などの取り組みは進められてきたものの、まちづくりを総合的に評価すると、一体どのようなまちづくりを目指しているのか、そして市長は何を考えているのかが私にはわかりにくかったところであります。
 市長2期目に入り、議会議決を経た新たな総合計画を実現すべく、施策体系面で決してレベルが高いとは言えない実行計画も策定されながら、何はともあれ、まちづくりの方向性や市政運営に落ちつきが見えてきたように感じられるとともに、越市長の政治スタンスも明確になってきたように感じます。つまり、公共部門の縮減を目指す小さい政府を志向し、市場原理を重視する新自由主義的なスタンスであります。ただ、言うまでもなく、小さい政府だから経済成長、地域が活性化するわけではなく、事実、北欧の福祉国家の多くは、日本よりも経済成長力が高い状況でございます。政府の失敗のリスクが高い場合は小さい政府が効果的だが、市場の失敗のリスクが高い場合は大きい政府が効果的であるのは定説であります。
 本市においては、ガス事業や公設市場などに代表される公共サービスの民営化志向、各種事業の公民連携、PFIの積極導入、また来年度予算の編成作業に当たっては、実質シーリング率を27%程度と設定するなど、現在進行形で小さな政府志向、新自由主義的な政策決定は、その勢いが加速しているように思われます。これは、しかし、選挙時、市長を応援してきたリベラル層が掲げる政治スタンスとは少なからず異なり、市民の間にも越市長の政治ラベルに対する混乱が生じているように感じられます。
 そこで、こうした動きの背景にある市長の政治スタンスや、そもそもなぜそのような政治スタンスを是とするのか、その理由を原点に立ち返り改めて質問をすることが、冒頭述べたように、首長の影響力が増す現下の地方自治にあって市民の理解を深め、今後の円滑な市政推進に資するものであると考えます。
 ついては、小さい政府、大きい政府に対する市長の考え、また市長がよりどころとしている政治スタンス、政治思想について伺うとともに、そうした政治スタンスをとる理由をお伺いしたいと思います。


 藤井哲也議員の御質問にお答えいたします。
 市長の政治スタンスについてでありますが、人口減少社会においても、大津に住む人を増やし、また大津に来る人を増やし、住み続けたいまちをつくっていきたいと考えています。一方で、日本全体において子どもを持つ世代の人口が減少し、今後の人口減少が避けられない中で、人口が減るということは、税収が減るということであり、その中で、いかに持続可能な大津のまちをつくっていくかを考えたとき、民間で任せられるものは民間に委ねる、事業は選択と集中を進める、公共施設は公共施設マネジメントに従った保有面積の縮小や民営化を図る、また、規制改革、規制緩和を進めて民間の力を生かすという小さな政府を目指すべきだと考えています。
 このような政治スタンスをとる理由は、人口減少にあわせて政府や自治体の役割も縮小していくべきということに加えて、私は、それぞれの市民が自由に生きることができる社会が目指すべき社会であり、そのためには政府の役割はなるべく小さくあるべきと考えています。
 そして、経済活動については、弁護士として企業の合併や破綻、再生に関わった経験から、自由な競争が経済発展につながると考えています。

 再質問いたします。御答弁どうもありがとうございます。今の御答弁でおおよそ理解はできました。いいんじゃないかなというふうに思います。
 ただ、行政規模、つまり財政規模の観点につきまして、もう少し深く市長のスタンスを聞きたいというふうに思います。
 私自身は、会社を2003年、24歳のときに創ったのですけれども、なかなか手元の資金だけではやりくりするのが難しかった、もう二、三年ぐらいずっとカップラーメンだったりとか、もう本当に貧しい生活をしていたなあというふうに感じます。ただ、収入に見合った支出、これは、一方では正しいのかもしれませんけれども、それだけであれば事業は成長はできないというふうに思います。
 私自身の経験からしましたら、やはり増資であったりとか、また借入金、また私は借金は悪いことではないというふうに考えてはいるんですけれども、そういったものをいかに生かして、そしてテコの原理で成長し続けるのか。つまり、負債を増やしたとしましても、それ以上の資産を得れるのであれば、バランスシート上、私は問題ないというふうに思ってるわけなんですね。
 そういう観点から、たとえ政府の規模が小さくなったとしましても、それはそういうスタンスなのかなあと思いますけれども、私は、たとえ財政出動があったとしても、それは未来に向けての財政出動であったりとか、新たな投資、こういったものは、借入金、借金をしたとしましても、やはり継続的に行っていく必要があるんじゃないあかと感じています。
 次世代や孫世代に何も残らない大津を持続可能という名の下で残すんじゃなくて、私は魅力的な大津市を残していく必要があるかというふうに考えておりまして、そういう点でいうと、規模縮小というのが、一定仕方ない部分はあるのかもしれませんが、新規事業、これについては、例えば財政フレームであったりとか、5カ年の地域財政計画に沿って進めるのもいいかもしれせんが、私は、新規事業、これが大津市をよくしていくんだという事業に関しましては、そこからやはり外すべきじゃないと考えてるところです。
 この点についてスタンスについてお伺いできないかというふうに考えております。


 将来、魅力的な大津を残すためにも、そういった新規事業については、そういった財政の枠から外すべきではないかという御質問であります。
 ですので、私も、事業の選択と集中を図るべきというふうに考えています。その中で、やはり全く何もしないということではなくて、最初に申し上げましたとおり、大津に住む人を増やすというのをまず第1に考えています。人口減少社会が進む中でも、大津に住む人を増やすために、やはり子育ての部分については力を入れて、現在も保育園等に投資をしています。こういったことがなければ、人口減少が進んで、将来、人口さえも減ってしまうという状況になると考えています。
 また、仰っていただいたように、財政の問題については、究極的には大きな政府、小さな政府という議論は、増税をして、いろいろな市民サービスをやっていくか、また、減税をして市民サービスを減らしていくかという議論であるというふうに理解をしています。
 私は、これ以上増税をするという、これ以上、国においては現状認識としては、やはり現在の財政規模に比較してさまざまな市民サービスが大きいために将来世代に対して残すもの以上の負債を負わせているという認識を持っていますので、一定のやはり行財政改革を進めて、将来世代に残すものと、一方で負債を残さないということも徹底していかなければならないというふうに考えております。
 以上でございます。

 再問です。御丁寧な答弁どうもありがとうございます。
 私も、選択と集中であったりとか、また子育て支援、次世代を育てていくということについては大賛成であります。
 先ほどの再質問の中でも取り上げさせてもらったんですけれども、それは、新規事業に関しましては、やはり私は、増やしたからといって、そしたら子育てに係る施策って、ほとんど国からの補助で賄えるわけだと思うんですけれどもね。それにも関わらず、事業費、具体的になっていくとちょっと市長以外の方が答えられるかもしれませんの控えますけれども、総枠の中では、市単費で出すお金というのがそんなに変わらないとは思うんですよ。そうであれば、私はその増やす分については、例えば政策的投資については、十分な精査が必要であるとは思いますけれども、その分については、シーリング規制は外すほうがいいんじゃないかと思っております。
 この点について、ちょっと明快に御答弁いただければと思います。


 増やすべき部分についてはシーリング規制は不要なのではないかということでありますけれども、一旦それぞれの部局において事業を精査し、スクラップアンドビルドをするという意味で、シーリングをかけています。
 その上で、最終的には、私としても、さまざまな将来世代のために行うべき施策については、選択と集中、予算配分、またそれに対する予算配分の選択と集中を私自身も図っていきたいと思っております。
 以上でございます。 

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 想定通りの市長からの答弁でした。政治スタンスはある意味、はっきりとされていてそれはそれで良いのではないかと思います。ただ地方自治体の首長としてはバランスを持った市政運営が求められるので、その点は今後も問題があればしっかりと質していきたいと思います。

 ちなみに、最近話題となっている「保守」や「リベラル」ですが、アメリカやイギリスと日本では、ちょっとその意味するところが違っているのかなとも感じます。アメリカやイギリスでは保守といえば自由主義的で小さい政府を志向していると思われます。アメリカの共和党やイギリスの保守党がこれに該当すると思います。これに対してリベラルはアメリカ民主党や労働党が該当します。
 保守は、個々人の自由を優先すべきという立場で、他人のために税金を払って自分の財産権を侵害されたくないという考えが根本にあります。リベラルは、「正義論」で有名なロールズの考え方に近く、他人のために税金を払っても安心できる社会環境を整備したいというものです。
 どちらが正しいというものではなく、人それぞれに考えがあっていいと思います。
 ちなみに私は、みんなの党時代はバリバリの保守で新自由主義的な考え方でしたが、足を手術し、様々な経験をする中で徐々にリベラルの立場の方の気持ちもわかるようになってきました。中道といえばカッコイイですが、できれば保守とリベラルの中間にいたいと考えています。
 
 日本では保守といえば自民党や、伝統的価値を重視する立場を一般的にさすようで、リベラルは良く言えば革新、悪く言うと社会主義的、共産主義的な立場だと思われているようです。
 海外での保守・リベラルの捉え方と、日本での保守・リベラルの捉え方は、全然異なっており、日本における捉え方でいうと私は保守主義に該当すると思います。ややこしい。

 なおこの質問を行った背景には、来年度当初予算の概算要求を27%シーリング(前年度比27%カット)という話が具体的に挙がり、私も資料で確認をしたため、市長に対して、大きい政府・小さい政府というスタンスを聞く中で、シーリング(予算カット=小さい政府志向)に関する思想や見解を聞こうとしたことがあります。

 この質問が生きるものであったか、意味がなかったものであるかは、来年度当初予算がどのように編成されるかで明らかになります。市長が大津市の未来のことを考慮せず、偏狭な小さい政府原理主義者でないことを祈るばかりです。


大津市議会議員 藤井テツ





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