地方創生への雑感

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 新年度が始まって早1週間が経ちます。
 仕事柄(若者向け雇用支援事業を15年間やっています)、この時期になると街中で見かける新入社員の皆さんに視線が行き、私自身の新入社員時代を思い出します。今から思い返しても20代前半というのは、なんでもチャレンジできる時期で、失敗が許される時期でもあります。20代前半でどれだけ頑張れるかで30代は大きく違うと思います。そうした点から、新しく社会に出られた皆さんには頑張ってもらいたいなと思います。

 さて地方自治体にとっては、昨年度は「地方自治体版ひと・まち・しごと創生戦略」を策定しました。大津市でも策定をしています。

大津市総合戦略 

 基本目標として掲げられているのは・・・
 ① 子育て世代が満足するまちづくり
 ② 仕事と暮らしが充実したまちづくり
 ③ あったか市民と活性のまちづくり
 ④ 持続可能なまちづくり
 というものです。
 
 細かく書けばキリがないのですが、大きな問題点としては、重要業績評価指標(KPI)の多くが、地方創生の本来の目的である人口減少対策や公共施設マネジメントとの関連性が弱いということが挙げられます。また「大津らしさ」があまり見えないのも問題です。
 ところどころに良い事は書いてあるので、それらを実際に施策展開に落とし込んでいくことが重要になってきますので、私としても良いところは推して、アカン部分は改善されるように努めていきたいと思います。

 ところで「地方創生」ですが、これは日本創生会議のいわゆる増田レポートによる提言がベースになっていると考えるのが一般的です。私が認識している趣旨としては、日本国や地方が生き残るためには、人口減少を食い止めなければならず、地方中核都市(人口20万人以上)のまちに都市機能を充実させ、人口のダム機能を持たせて、人口再生産性が低い東京への人口一極集中を是正しなければならないというものだったはずです。

 そして各自治体が総合戦略の中で設定した重要業績指標の達成状況などに応じて、国から交付金が支給されるもので、地方自治体ごとの頑張りが評価され、国から選別されるということになります。選別されるということは、ダメな地方自治体はお金がもらえず益々ダメになっていきかねないという事を意味しており、地域間の格差は拡大することを前提とした制度です。こうした競争原理を生かして、都市間競争を通じた各まちの活性を促進するもので、硬直した行政施策を転換するキッカケとしてはいいものになると思います。

 ただし、そもそも人口の東京一極集中が起こったのは、生活の便利さもあるかもしれませんが、それ以上に「自由なライフスタイルへの憧憬」が要因ではないかと私はふと思いました。なぜ地方・地域から人が離れるのかと言えば、閉鎖的・閉塞的なコミュニティ風土、慣習、しがらみから離れたかったからではないかと思うのです。
 そう考えると、単に子育て支援施策を充実させたり、雇用を生み出すだけでは大都市圏からの移住は叶わないだろうし、せいぜい既存住民の転出抑制や近隣自治体からの転入しか見込めないのではないかと思います。

 こうした気付きは、足の手術に伴う入院期間中に改めて、ある書物を読んだ時に書いてあった事柄が目に入ったからです。

 田舎社会では、ひとり一人の人間にとってコミュニティは与件である。家族、宗教、階層、カーストのいずれにせよ、コミュニティは厳としてそこに存在する。しかも移動性はない。あったとしても下に向けてだけである。
 かつてのコミュニティは、束縛的だっただけでなく侵害的だった。
 これが昔から田舎の人が都市へ出たがった本当の理由だった。
 都市社会は文化の中心だった。芸術家や学者が活躍するところだった。コミュニティが欠落していたからこそ上方への移動が可能だった。
 (「ネクストソサエティ」(P.F.Drucker)



 近隣自治体からの人口の奪い合いは不毛です。
 大津市がやろうとしているのは、近隣都市からの人口の奪い合いのように思えます。
 そもそも東京や大阪から移住してもらうにしても、知名度もなければ、これという「ライフスタイル」の提案もありません。東京や大阪に集まった人口を大津に呼び寄せるためには、「子育て世代が満足するまち」とか、「仕事と暮らしが充実したまち」とか、そんな抽象的な概念ではなく、「大津にすめばこういうライフスタイルで生活することができるよ」という提案が、直接、東京や大阪に在住している人に届かなければ意味がありません。いま大津市がやっているのはインナーマーケティングで、いってみたら単なるパフォーマンスであり、自慰的行為ですらあるように感じます。
 そうは言っても、観光分野では少しは提案的な事柄がなされるようになってきています。そうした点では僅かに評価してもいいかもしれません。

 また、ヨソモノに対してオープンなコミュニティを形成していかねばなりません。そうしなければネット社会の今、大津に住んだけど「自然環境はいいけど、人付き合いが大変だ」という感じで、悪い評判が広がりかねません。対外的に良いイメージを持ってもらうこと(ブランディング)が、東京一極集中の人口構成を打開するための地方創生では大事なのではないかと思います。

 地方創生に関しての雑感です。


大津市議会議員 藤井哲也拝





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