【一般質問解説③】 JR湖西線の並行在来線問題と湖西地方の活性(2)

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 JR湖西線の並行在来線に対する問題について、一般質問に取り上げた背景を解説します。

 JR湖西線は道路網が整備された湖西地方にあっても、交通弱者や遠距離移動者、通勤通学者にとって極めて重要な交通の「足」であり、万一 並行在来線として検討対象となり、また大津市などが出資して運営するようになったとしたら、ほぼ確実に便数減や料金アップとなってしまうでしょう。
 
 昨日(3月12日)付の日本経済新聞に、JR西日本の社長への取材記事がありました。
 それによると、『(北陸新幹線は)これまでの新幹線とは異なり、並行した在来線がない。ただ「特急の乗客が新幹線に移行すれば、その特急が走った路線が並行在来線」という考え方。湖西線や小浜線、山陰本線など対象を選定する作業も必要。第三セクターに移管する従来の方式は踏襲する。』ということです。

 並行在来線の検討対象として、JR西日本の社長が真っ先に挙げているのが「湖西線」。
 従来、北陸新幹線の敦賀以南ルートとしては、JR東海の東海道新幹線と米原駅でつなぐ①「米原ルート」、JR湖西線をフリーゲージトレインで走る②「湖西ルート」、小浜市近辺を通り亀岡市を経て大阪に至る③「小浜ルート」がありました。
関西広域連合は昨年まで①の「米原ルート」で合意してきましたが、京都府を中心に別ルートを模索する議論がおこり第4のルートとして、小浜市近辺を通り将来の山陰新幹線との接続を見据え舞鶴周辺に新駅を設置し、そこから南下して京都から関西空港を結ぶ④「舞鶴ルート」の機運が高まってきたかと思うと、今年1月下旬にJR西日本が第5のルートとして、小浜市近辺から南下して京都近辺を通り大阪へ至る⑤「(新)小浜ルート」を要求してきました。

 そして先日、与党国会議員による検討委員会において、①「米原ルート」、④「舞鶴ルート」、⑤「(新)小浜ルート」の3つに選択肢が絞られることとなり、5月以降に国土交通省による調査へとプロセスが進むこととなりました。
 JR西日本が際の際で押し込んできた⑤「(新)小浜ルート」が3案に残った意味は大きくまた北陸新幹線の終着駅が「新大阪」か「天王寺」であることも決められたため、舞鶴⇔大阪⇔関西空港を弓型で結ぶ路線を前提としていた④「舞鶴ルート」は若干厳しくなったように思います。
 ①「米原ルート」は過密ダイヤの問題や、JR東海に線路通行料をJR西が支払う必要性があるなどの課題もあり、いまのところJR西日本が求めている⑤「(新)小浜ルート」が最有力と考えていいように思います。


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 事業認可前に並行在来線を決定することが決められており、国土交通省の調査がどれくらいあるか分かりませんが、国会での審議も含めると北陸新幹線の敦賀までの供用開始となる6年後の2023年(平成34年)までには重要な局面を迎えると思います。

 他の整備新幹線(九州新幹線や北陸新幹線のJR東日本側)でも、並行在来線となっても、引き続きJRが経営分離せず運営を担っているケースもありますが、どちらかと言えばレア(希少)なケースで大半の並行在来線は経営分離され、自治体出資の第三セクターが運営することになっています。
 引き続きJRが運営を担っているケースでは、その多くが採算性が高い路線で、JRも民間企業である以上、利益が見込める路線からの撤退はないということです。

 湖西線もいまのところ乗降客が多く、また貨物列車も通過しており線路通行料も確保できる見込みがあることから、「採算性は悪くないのでは?」と思いがちですが、先の日経新聞の取材記事を見ると、「第三セクターに移管する従来の方式は踏襲する。」と述べていることから全く予断は許されずどちらかと言えば非常に厳しいものと言えます。

 もし「採算性が見込める路線のみ経営分離しない」というのであれば、堅田駅~近江塩津間の湖西線をJR西日本が経営分離する可能性があります。現実的に考えられることは、総務人員などの間接費用を軽減するために「長崎方式」と呼ばれる上下分離、つまり路線・施設は地方自治体が持ち、運行はJRが担うという形を提案してくる可能性があります。
 この場合、大津市や高島市、滋賀県が赤字相当額を財政負担する必要性が生じてきます。

 とはいえ、JR湖西線も「従来型の並行在来線」でないことは、日経新聞の取材でJR西日本の社長が述べています。全く交渉ができないわけではないと思います。


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 まずは大津市長が、与党国会議員や滋賀県とのコミュニケーションを密にとり、経営分離の際の条件である「地元自治体の同意」を念頭に、要望・議論を行っていくと共に、国土交通省の調査も各段階で収集し対策を検討していくなどの必要性があると思います。
 また、原則的にJR湖西線の第三セクター化は、多くの市民や議員が反対をしていると思いますので、協力しながら一丸となって反対運動を広げていかねばならないように思います。

 そうした最悪の事態を想定しつつ、湖西線が「採算性」がとれる路線であり続けられるように、越市長が言う「住み続けたい大津」、「住み続けたい湖西地方」に向けたダイナミックな活性策が求められます。
 この活性策は、大津市が担う部分であり、次期大津市総合計画や次期都市計画マスタープランの策定に合わせて、これまで以上の意欲的な姿勢が必要に思います。


大津市議会議員 藤井哲也拝





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