大津市の出生数アップに向けて③

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男女別 結婚年齢別・婚姻関係持続期間別の平均子ども出生数
 男女結婚年齢別子ども数

女性の結婚年齢別 完結子ども数の推移
女性結婚年齢別子ども数


 「未婚率(婚姻率)が赤ちゃんの出生数に関係が深い」ことを述べてきましたが、もう一つ大きいのは「結婚年齢が若いほど、赤ちゃんの出生数が多い」というものです。この二つを以って、「未婚・晩婚化」が出生数や合計特殊出生率に大きく影響を与えていると言われる所以と思います。

 上図は国の統計によるもので、20代で結婚した女性の出生数が2人前後であるのに対し、30代前半では1.5人、30代後半では1人を少し超える数値となっています。男性は女性に比較して、結婚年齢と子ども数の関係は薄いという結果です。

 大津市のこれまでの取り組みの中心は、「既に結婚をした人」が中心です。
 こうした取り組みに加え、「(できるだけ若いうちに)結婚できる環境づくり」を進めていく必要があります。

 
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 結婚促進政策を考えていくうえで一つの理論を取り上げたいと思います。
 「期待理論」と呼ばれるものです。

期待理論から結婚を考える


 モチベーションの源泉は何かを説明する際によく引き合いに出される理論の一つです。
 なぜ結婚をしたくなるのか?逆にしたくないのか?をこの理論をもとに少し考えてみようと思います。

 「得られるものの大きさ(報酬価値)」×「得られるであろう確率(主観確率)」=「モチベーションの大きさ」

 というのが基本的な考え方です。
 結婚を以って考えてみると・・・

 「報酬価値」は、結婚することによって得られるであろう心理的な幸福感や経済的にプラスになる面、または予想される将来の生活(子どもが生まれることも踏まえて)や社会的な信用力などといったプラスの報酬もあれば、結婚することによって犠牲になるマイナスの報酬(経済的な負担増や、女性であれば妊娠や出産、子育てなどによるキャリアロスなど)が該当します。

 「主観確率」は、そうした報酬を得られるであろう確率ですが、これは自分と同じくらいの能力や学歴、職歴を持った人がとっている努力量などから主観的に判断されるもので、一般的には身近な人(学校の同級生や兄弟姉妹又は両親、もしくは会社の先輩や同僚など)が結婚して幸せそうにしているかどうかが判断材料になると思います。

 この「報酬」×「確率」が高ければ高いほど、個人の結婚観によって差異はあるものの、「結婚したい」という動機づけは高まるものと思います。


 最新の「出生動向基本調査」によると、結婚によって得られるプラスの報酬として一番大きいのは、「子どもや家族を持てる」であり、「精神的安らぎの場を得られる」が続いています。結婚の一番のメリットは「家族を持てる」ということそのものにあると考えている人がたくさんです。

結婚することの利点2010


 反面、結婚することによるマイナスの報酬は、「自分の生活リズムや生活スタイルが保てるか」(男性48.7%、女性60.5%)、「余暇や遊びの時間を自由に取れるか」(男性46.7%、女性51.1%)、「お金を自由に使えるか」(男性46.1%、女性46.5%)などをイメージしているようです。

結婚をイメージしたときに気になること2010


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 結婚によって犠牲にする事柄があるのは、私も結婚をして仕方ないと実感しています。
 もちろん自分の時間を自分のために使いたいですが、子どもができればそうとも言っていられません。
 ただこうした実感は今に始まったものではなく昔から言えることで、おそらくムラ社会で、多産だった昔の方がよほど犠牲にする事柄は多かったように思います。
 
 
 しかしながら、家事や子育ては男女共同参画で進めていくべきでしょうし、調査結果にはありませんが、女性の場合、妊娠・出産・育児のために一時的に職場を離れることによるキャリアロス感を解消する施策も進められるべきに思います。


 一方で考えられるのは、自分の周りを見渡して、幸せそうにしている友人知人の絶対数が減っていることも考えられます。
 これによって結婚・子育てによって得られる「プラスの報酬」が現実的にイメージできにくい環境があるように感じています。

 幸いといっていいのか、いま私のまわりには結婚している人、子どもに恵まれている家族がたくさんいます。ただそれが10年前の27歳だったころはどうだったのか言えば、自分の周囲の同世代で結婚している人も少なければ、子どもに恵まれている家庭もほとんどありませんでした。友人知人で結婚している人がいなければ、結婚後の生活はイメージできません。結果的に将来の選択肢としての結婚は、「もう少し先でもいいか?」と思うようになってしまいます。

 みんな晩婚なので、結婚や子育てのイメージを20代のうちは持つことができていないー。
 ということが言えるのかもしれません。

 イメージできるか、できないかということは非常に重要で、例えば就職活動でも就労開始後の活躍のイメージができなければ面接はおろか応募でさえも躊躇するでしょう。期待理論にあてはめてみると、近くに該当者がいないということは内発的動機づけが得られにくく、「報酬価値」そのものがイメージしにくくなるということが言えると思います。

 20代後半から30代前半にかけての多くの若者は、「プラスの報酬」より「マイナスの報酬(犠牲)」の方が感じられる量が大きくなっており、「まだ結婚の必要性はない」と思ったり、「自由さや気楽さを失いたくない」、または「仕事に打ち込みたい」と思う人が多くなるようになっているのではないかと感じます。

 これは次に紹介する25歳~34歳男女への「結婚しない理由・結婚できない理由」の表からも見て取ることができます。

結婚しない理由結婚できない理由(女性2010)

結婚しない理由結婚できない理由(男性2010)


 上図でもう一つ注目すべきは、「結婚できない理由」で多くの男女が掲げている、「適当な相手に巡りあわない」が多数を占めている点です。
 実際、この世代で私が知っている方で未婚の方に聞くと、やはり「仕事が忙しくて出会う機会や場がない」というのが圧倒的に多いと感じます。それ以外には非正規雇用で働いていることや介護福祉や保育などベース給与が相対的に低い業界で働いている方たちから、「経済的事情」で結婚できないということも聞きます。

 少し文章が間延び気味になっていますので、大津市民の現状認識と大津市の課題について筆をあらためて次に進めます。


大津市議会議員 藤井哲也拝








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