一般質問解説⑦「いじめ対策」

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今議会での一般質問最後の項目は「大津市のいじめ対策」に関してです。

大津市では2011年7月に市内中学校に通う生徒がいじめを苦に自殺をした事件がありました。当初争う予定だった大津市は第三者調査委員会による調査結果及びいじめ対策の提言を受けて、2013年4月から条例に基づき、いじめ対策を進めてきました。

現在の大津市のいじめ対策の推進体制は以下の図のとおりです。

大津市いじめ対策体制


いじめが疑われる案件については、直接、市民部内の「いじめ対策推進室」に寄せられる情報や相談のほかに、学校現場で把握した情報については教育委員会の児童支援課が取りまとめ、その情報を「いじめ対策推進室」に共有することで、「いじめ対策推進室」にて情報管理の一元化を図っています。

「いじめ対策推進室」が収集したいじめが疑わしい案件については、条例設置機関である「大津の子どもをいじめから守る委員会(通称:守る委)」にてケースごとに対応策が検討されています。(詳細は非公表のためどのような会議がなされているかは一切分かりません)

また、いじめと確定し対処が必要となった案件については、「いじめ対策推進室」から「相談調査専門員」と呼ばれる嘱託職員が学校現場に出向き、いじめ被害者の心のケアなどを行います。一方、いじめ対策として、今そこにあるいじめへの対処(加害者への対応など)については、学校任せになっており、「いじめ対策推進室」はほぼ関与していません。
つまり情報は「いじめ対策推進室」が一元的に行っているものの、対策については学校現場任せとなっています。また、「守る委」で検討された話などは、学校現場になかなか共有されておらず(学校現場が個人情報などを盾に、市長部局から信頼されていない)、学校現場では「いじめ対策推進室」への不信感が非常に高いというのが現場の声です。

どうやら、いじめ対策においては、いじめの疑い件数を増やすことが目的化してしまっている側面も一部であるようで、学校現場からすると相談調査専門員がいじめがないか、営業活動をしに来ているように感じ、迷惑に思っていることが多々あるようです。実際に私自身もそのように聞きました。(本会議ではもう少し踏み込んで学校現場の声を紹介しました)

さらに、いじめ対策推進室に所属する「相談調査専門員」は、体制立ち上げ当初から大変入れ替わりが激しい状況が続いており、「いじめ対策推進室」という名称とは裏腹の、組織内部の人間関係があると聞き及んでいます。

いじめ対策を進めようとしている体制において、対策推進室内部でのゴタゴタ、そして市長部局のいじめ対策推進室と、学校現場との信頼関係の弱さ、不信感の強さ、加えてそうした学校現場の声を把握していない大津市教育委員会。このような状況で果たして適切ないじめ対策を進めることができるのでしょうか。私ははなはだ疑問に感じます。

市長は「大津モデル」とする、独自のいじめ対策を進めてきたと述べています。
確かに、大津市議会主導で作った条例に盛り込まれた第三者機関設置などは大きな成果かもしれませんが、いじめ対策の推進体制の運用面においては、現場の声を聞く限り、うまく回っているとは思えません。
マスコミなども外見的にいじめ対策が講じられているという部分は報じていますが、その実態にまで踏み込んで報じていることは少ないように思います。

私が考える問題点は次の3つです。
(1)学校現場の生の声を聞かず、市長らの顔色ばかりをうかがう市教育委員会(教育委員)の体質
(2)いじめ対策における「いじめ対策推進室」と「学校現場」との対等な立場での信頼関係の欠如
(3)いじめ対策の成果指標の問題点(課題解決件数ではなく認知件数となっている等)

見かけ上、いじめ対策が取られているようでも、その実態が散々であるならば、他の事業を削ってまで充当している税金(相談調査専門員人件費:約2千万円、いじめ対策推進費:約7百万円、いじめ対策担当教員配置事業費:約2億1千万円、学校いじめ対策充実費:約5百万円)の使途としての妥当性を問われかねません。


今回の答弁書はこちら

いじめ対策を進めていかねばならないのは強く共感するものですが、問題から目を背け、耳触りのいいことばかり言うことは問題です。大津市のいじめ対策に触れることは一種のタブーに近い空気があります。しかし、そろそろその実態に目を向けて、駄目なものはダメとしっかり言っていく必要があるように感じます。


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前教育長の富田氏が新たにブログを開設されました。
⇒ 富田眞氏ブログ

富田氏は1年少しの在任期間でしたが大変素晴らしい成果を残されました。
今でも大津市教育行政にとって富田氏の退任は惜しむものだと思います。
後任の井上教育長になってからの評価もそろそろしていく時期にあるように思います。

富田大津市前教育長の記事
(日経ビジネスに掲載された富田氏の記事)


大津市議会議員 藤井哲也拝





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