ボブルヘッド・コレクター。

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おはようございます。
滋賀県の大津市議会議員、藤井哲也です。

昨日から11月議会が始まりました!12月19日までの期間、議会に提案された条例案や補正予算案に対し、慎重審議を進めて参ります。
なお「本会議一般質問」は12月8日~10日の3日間の予定です。(11日は予備日) 今回も一般質問に向けて準備を進めています。おおよその日程が確定するのは12月2日になりますので改めてご案内させて頂きます。是非 議会に一度お越し頂くか、ネットでご覧頂けましたらと思っています。宜しくお願い致します。

ところで昨日の11月議会初日に「教育委員会委員(教育長候補)」の任命に関する議案審議が行われました。従前より取り上げてきましたが、大津市では今年3月に前教育長が辞任し、以後8カ月にわたって教育長が不在であるという異例の事態が続いてきました。そしてようやく市長から提案があったわけです。
が、この人事案に関しては本当に悩みました。
そして、結局最後は反対をしました。


藤井哲也討論風景26年11月

以下が私の議場で述べた反対討論です。もしよければご覧くださいませ。


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 議案第220号「教育委員会委員の任命」に対し反対討論をする。

 前教育長が本年3月に辞任してから早8ヶ月が経過した。中核市であり一定の教育行政権限を有す本市において、教育長が不在という異常で違法な事態が継続してきたわけである。

 この間 松田教育部長が職務代理者としてその重責を担い、非常勤である他の教育委員会委員が交代で職場に詰めるなど相当の負荷を被りながらも、教育委員会執行部が 一体感を持ち、教育行政の円滑運営に努めつつ、新しい課題にも日々 無難に対応をしてきた。

 そうした状況下、ようやく教育長候補である教育委員会委員の人事案が本議会に提案されたところである。一刻も早く異常で違法な状態を脱すべく、そして教育現場に平穏を取り戻し、子どもたちがストレスなく毎日を過ごすことができるように、教育長を選任すべきことは今更申すまでもない。

 しかしながら今回、私は深く思い悩んだ末、以下3点の理由により 本議案に反対する。

反対理由1:教育長としての識見等の不足
 市長が今回提示してきた窮余一策とも言える候補者は、そもそも教育長として必要な教育分野の知見や専門性、または現場知識、経験、人脈を有していない。卓越した事務執行能力を有していると市長は述べているが、教育委員会事務局に配属されて半年に過ぎず、組織トップとして日常の業務並びに今後起こりうる重大事態に対応するには日が浅いと言わざるを得ない。卓越した行政手腕を生かすも殺すも、その分野の知識・経験ありきの話である。
 また、来年4月から施行される新しい教育委員会制度において、教育長は現在の教育委員会委員長の職務も兼ねることになり、ますます教育行政における役割は増していく。今後、自己研さんにより知見や資質を向上し、他の教育委員会委員や事務局がサポートするにしても、重要事項に関する判断を行うには荷が重いのではないか。

反対理由2:教育長としての組織マネジメント力の不足
 候補者は越市長の秘書課長として2年間職務にあたり、また本年4月からは教育委員会事務局次長として役割を担ってきた。とは言え、これらの経験をもって教育長として必要な組織マネジメント力を有しているかといえば疑問である。
 大津市教育委員会は80名の事務局職員と240名を超える現場教職員等によって構成されているが、これら320名を超える組織のトップとしてリーダーシップを発揮できるかはこれまでの職務内容や面談を通じて感じた印象、職務遂行能力の観点から困難であると私は考える。
 教育長は単なる組織のお飾りではなく、組織のリーダーであるべきなのは申すまでもない。

反対理由3:現体制との比較
 仮に今回の候補者が教育長に就任したことを想定し、松田部長を職務代理者とする現在の緊急時体制と比べ、どちらが子どもたちのために良いか 私なりにイメージし、比較検討をした。今回の候補者は議会を含む各部門との調整力や、組織マネジメントでの経験・能力において未知数の部分が多く、一定のリスクを抱えていると言わざるを得ない。また候補者は他の教育委員から信頼を得ていると市長は述べたが、同等かそれ以上に松田教育部長の方が厚い信頼を得ているように感じるのは私だけではないはずだ。
 そのように考えると、ほぼ教育行政の素人である人材が新たに教育長に就き、松田部長が国体準備の部署に配置転換する人事構想を予め伺っているが、そうであるならば現場は混乱し、教育改革は遅滞し、ひいては 子どもたちにシワ寄せが生じるリスクを敢えて選択するのは難しい。リスクを冒してまで得られるものも見えてこない以上、現在の体制の方がまだマシであろう。

 
 以上述べた3点が反対する理由である。
 なお、候補者本人に対しても今回の件は心中を察するところである。述べてきた反対理由は、決して一般行政職としての候補者の経験や知見を否定するものではなく、あくまで教育行政分野における評価であることをご理解いただきたい。

 最後に市長に一言申し上げて、討論の結びとしたい。

 私はこの8か月間、どのような方を新しい教育長として市民、議会に提案してくるのかと大きな期待を抱きながら今日まで待ってきた。きっと前教育長のように素晴らしい方を提案してくるのだろうと。そうした中で今回提案されたのがこの案である。誠に遺憾であるとしか言えない。
 社会にはもっと有為な人材がキラ星のごとくおられる。そうした人物を発掘し、迎えることができなかったのは、大津市の未来にとって大いなる損失である。
 私自身、教育長の不在を解消するため、苦渋の決断により賛成することも考えたが、最終的には現体制のほうがまだマシであるとの結論に至った。
 このツケはきっと 子どもの教育現場に影響し、市長自身の評価につながるはずである。私は今回の人事案に反対をする。以上

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討論後に採決が行われ、27人の賛成 10人の反対により承認可決されました。
そして議会終了後に自室に戻ると一枚のシートがデスクに置いてありました。

なんと!!いま先程まで教育長職務代理者として議場にいた松田教育部長が、新設の国体準備のための推進監というポスト(部下なし、一人部屋)に11月29日付(本日!)で異動する通知でした。またしても有能な人材が追いやられました。越市長においては過去からこうした人事が目立つのですが、このようなことを繰り返しているからこそ人心が離れ、評判が広がり、今回の教育長人事の人選でもなかなか候補者を見つけられなかったのだと思います。


最近読んだ本で特におもしろかった本があります。
グーグルの最高経営責任者を10年にわたって経営してきたエリック・シュミット氏が著した「How Google Works~私たちの働き方とマネジメント~」というもので、新世代における優秀なクリエイター(スマートクリエイティブ)の活用に関するマネジメント本です。

その著の「意思決定-コンセンサスの本当の意味-」という章に次のような一節がありますので、今の私の気持ちを代弁する言葉として転載したいと思います。


グーグルマネジメント写真 ボブルヘッド26年

 ボブルヘッド(首振り)人形は会議室にもたくさんいる。テーブルのまわりにずらりと並び、だいたい同じタイミングで一斉にうなずく。元グーグラーでAOLのCEOとなったティム・アームストロングは、この現象を「ボブルヘッド・イエス」と名づけた。「ボブルヘッド・イエスマン」は従来型のイエスマンとは違う。会議室から出たとたんに、たったいま同意したことへの不満や反対意見を口にするからだ。(中略)
 会議の出席者全員に「イエス」と言わせても、全員が同意したとは限らない。あなたの部下がボブルヘッドだらけであることを意味するだけだ。“コンセンサス・ベース”の意思決定を目指すリーダーは多いが、コンセンサスの意味を根本的に誤解している。ラテン語の授業をすっぽかした方のために解説すると、コンセンサスの本当の語源はラテン語で「一緒に」を意味する「Cum」と、「思う、感じる」を意味する「Sentire」だ。直訳すると「一緒に考える、感じる」となる。つまり「満場一致」という意味はないのである。コンセンサスとは全員にイエスと言わせることではなく、会社にとって最適解を共に考え、その下に結集することなのだ。
 最適解に到達するためには、意見の対立が不可欠だ。オープンな雰囲気の下、出席者が自分の意見や反対意見を述べなければならない。なぜならすべての選択肢を率直に議論しなければ、全員が納得し、結論を指示することはあり得ないからだ。納得していない者はボブルヘッド人形のようにうなずいておきながら、部屋を出たとたんに自分の好きなように行動する。だから真のコンセンサスに到達するには、反対意見が必要だ。あなたがリーダーの立場なら、議論の最初に自分の立場を明らかにするのは控えよう。あなたの役割は参加者の地位や職務にかかわらず、全員の意見を引き出すことだ。トップが最初に意見を言ってしまうと、それは難しくなる。

(日本語版 P213-214)


当然ながら、ボブルヘッドばかり量産する組織に、未来がないのは言うまでもありません。
ボブルヘッドは最初からボブルヘッドにあらず。トップの姿勢こそが決定要因です。


大津市議会議員 藤井哲也拝



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