「コミュニティ・スクール制度」の課題に関する視察。(東京杉並区)

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おはようございます。
大津市議会議員(滋賀県)の藤井哲也です。

11日(月)に東京の杉並区へ行政視察へ行きました。
杉並はコミュニティスクールの先進地であり、多くの課題を抱えながらも一つずつ解決しながら推進されています。大津市の第4回 教育振興基本計画策定会議にも講師でこられた藤原和博氏が杉並の和田中学で改革に取り組まれたことなども有名です。(※1)

杉並区視察26年藤井哲也


実は杉並区に行くのは2回目です。1回目はちょうど2年前の11月12日に。(※2)
そう。この数か月前に大津いじめ事件と後に呼ばれる事案が明らかになり、一時的に市役所は機能不全に陥りました。議会がいち早く対応に着手し、「大津市子どものいじめの防止に関する条例」づくりに取りかかり、私も委員として参画した条例検討会議を20回近く開催し、様々な意見を頂く中で翌年2月議会で条例制定されました。

そうした最中に訪問した第1回目の杉並区役所への行政視察。
当初は法定附属機関でなく、法的性質が曖昧だった市長任意の第三者調査委員会(※3)による提言は当然まだ為されていない時期です。後に市長が述べる教育委員会制度の体質も事案の背景にもちろん存在すると思いますが、それ以上に学校と地域・家庭との信頼関係や連携、そして学校の運営方式にあると考えていました。

フェイスブックを通じて大津市の課題を述べたところ、東京在住の議員から杉並区のコミュニティスクール制度の視察を勧められ、お伺いしました。
「コミュニティスクール???」というのが当時の印象で、どういった制度なのかも、ネットで見てなんとなく分かったくらいです。

第1回目の行政視察結果を持ち帰り、その後 大津市議会本会議で幾度も、コミュニティスクール制度導入の必要性を述べてきました。(※4)
当初は「学校協力者会議があるので大丈夫」と頑なな姿勢でしたが、風向きが変わったのが、2013年2月に就任した前教育長・冨田眞氏の力によるもので、同年10月に正式に「コミュニティスクールを来年度(平成26年度)から始める」と述べられるに至りました。(※5)

冨田氏は教育長を辞められましたが、その想いは教育委員会に根付き、最初の提案から2年5カ月を経て、ようやく来年度からモデル校での導入がスタートします。

制度導入にあたり、いくつかの課題が想定されます。これらについては検討課題として昨年11月議会で取り上げました。例えば、「地域コーディネート本部機能の充実」や「学校選択制との兼ね合い」、「学校ごとの学力テスト公開の問題」などです。(※6)
そうした課題について、今年1年間検討を市教委ではされてきたと思います。
中でも重要な課題だと私が考えているのが、「学校選択制との兼ね合い」の問題です。

今回の行政視察においては、特にこの点についてネットには書いていないことを杉並区役所にう伺ってヒアリングしたいと思いました。

というのも、杉並区では「学校選択制」(学校希望制度)を2016年度入学生から廃止する方針を決定しているからです。学校選択制の当初目的とされた「開かれた学校づくり」が、ほぼ達成されたことが一番の理由だと担当者の方は仰っておられましたが、なにか釈然としないものを感じました。廃止するとなると、当然反対される方も多いと思いますが、内情をもう少し詳細に教えて頂ければ更に嬉しかったところですが、仕方ないのかもしれません。

ネットなどでの理由をまとめると・・・
●校舎の新しさや風評などに左右され希望者数に偏りが生じる場合など、今後改善すべき課題がある。
●PTA役員や校長を対象にしたアンケートでは廃止や見直しを求める声が大きかった。
●大規模災害時の対応にも支障が出る。
●事実に基づかない噂などで、学生が集まらない学校(数十人しか集まらない学校も)が出てきた。
などが挙げられます。

確かに「学校選択制」は全国的にも大きな曲がり角にあるようです。
大津市では平成15年から、近畿で初めて学校選択制を導入しました。以来11年が経ちます。
そうした中、全国的な問題となっていますが、人気学校ができて、不人気な学校は生徒が集まらず活気が失われているという状況です。生徒にとっては人数が足りなくて廃部になる部活動もある中、行きたくても他の学校を選択せざるを得ないなど、弊害が大きくなってきています。

一方では学校選択制のメリットは、競争原理により教育環境の整備が進んだりすることが挙げられますが、例えば現在では私の出身校でもある市立平野小学校や、地元近くの堅田小学校などでは先進的に英語教育が始められています。
他の学校でもそうした取り組みを始めるべきだと思うのですが、障害となるのが「予算という壁」です。結果、そうした先進校は「モデル校」として市から優遇措置を受けることになり、ますます学校間人気格差が生じてしまう原因ともなっています。

また、「学校選択制」を廃止したからといって、完全に他の学校へ通学する術が絶たれるのかと言えば、そのようなことはありません。杉並区にもありますが、大津市にも従前からある「就学指定校変更」により、一定の理由がある子どもは許可を得て、隣接学校へ通うことができます。(※7)

コミュニティスクール制度を導入した場合の、「学校選択制」のあり方については、すでに市役所内部で議論されていることと思いますが、あらためて早期に方向性を固めて頂くべく、私なりに提案をしたいと考えています。

大津市議会議員 藤井哲也拝



【参考】
※1:第4回大津市教育振興基本計画策定会議 議事録(PDF)
※2:2012年11月14日ブログ記事「東京都杉並区役所と京都市へ学校教育に関して行政視察」
※3:2012年7月22日ブログ記事「外部の第三者調査委員会、私が考える疑問点【1】」
※4:2012年12月30日ブログ記事「コミュニティ・スクール(地域運営学校)制度導入に関して」など
※5:2013年10月11日ブログ記事「大津市教委がコミュニティ・スクールについて研修会を実施!」
※6:2013年12月16日ブログ記事「コミュニティ・スクール導入について」
※7:「学区外通学について」(大津市ホームページ)





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