議員研修会「タクシーによる乗合ビジネスの開発ー方策と可能性」報告

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こんにちは!
大津市議会議員 藤井哲也(ふじい・てつや)です。
本日は節分。季節の変わり目になります。
徐々に寒さも和らいでくれれば嬉しいところです。

さて、先に申しておりました1月28日に東京で開催された、研修会「タクシーによる乗合ビジネスの開発ー方策と可能性」についての報告になります。
ちなみに、私は大津市議会内の施設常任委員会という建設や道路、公共交通、中心市街地活性化、ガス・水道などの公共インフラにかかわることを扱う部門に所属しておりますので、こうした研修にも積極的に参加していきたいと思いますし、委員会では少しでもいいまちづくりにつながるよう、提言をしていきたいと存じています。


この研修の副題は「オンデマンド交通システム(ICT)活用の乗合タクシー成立条件を探る」、「高齢者サービスを新ビジネスにする」という2つもので、議員だけではなく、行政関係の方や地域の大手交通会社、タクシー事業者の方々も参加されていて、いかにすれば補助金頼みの公共交通事業から一歩抜け出すことができるのかについて複数の先生から講義がなされました。

講師の先生は、神谷聖二氏(順風路㈱取締役・研究開発二部部長)、松丸尚氏(有限会社北柏交通代表取締役)、岩村龍一氏(㈱コミュニティタクシー代表取締役)、武本英之氏(東京交通新聞編集局長)、寺田一薫氏(東京海洋大学教授)です。

神谷氏からは、現在のバスやタクシー業者が直面している課題についてまず説明がありました。
つまり、バスやタクシーの需要が激減している。そうなると事業収入の低下によるサービスレベルの低下が起き、利用者が減り、最後に不採算路線の廃止になるか、地域からの強い要望で高い税金を投入せざるをえなくなってくる。
一つの解決策として試されているのが、コミュニティバスであり、車両の小型化によって運航コストを下げる努力をしている。しかし需要が少ない地域では利用者を増やすために住民の要求(デマンド)に近い形での運航(バス停の配置、運航頻度、路線数)にならざるをえず、結局 事業収入を圧迫し、サービスのレベルを抑えると利用者が減り、運航を断念せざるをえなくなるか、もしくは採算を税金で補てんして運航継続するかということになっている。

そこで出てきた発想が、必要な時だけ「乗合でバスやタクシーを運行させる」という発想で、いわゆる「オンデマンド(要求に沿った)バス・タクシー」の事業です。
東京大学開発しているICTを活用した新しいオンデマンド交通補助システム「コンビニクル」というものについて説明を受けました。

次の松丸氏は、実際にそのコンビニクルを活用した事例を持っておられ、北柏(千葉県)で実証実験をされました。高齢者が増えている住宅街と商店街を結ぶ、デマンドバスを走らせたということです。2キロ未満は200円、2キロ以上は400円~800円です。
乗合率は高まらず、単なるタクシーになってしまうこともあったようですが、地元の商店街さんと組んで、オンデマンドバスを使えば商店街でもらえるポイントが3倍になるなどのキャンペーンを張ったそうです。
コンビニクルを活用したオンデマンドタクシー事業は、立ち上げ費用は五百万円程度ということです。つまり年間、数千万円の補助金をつぎ込んで路線を維持する必要がなくなるということです。

利用者にとってはタクシーよりもはるかに安くで目的地に到着できるというメリットがありますが、他の乗客を拾いにいくため遠回りせざるをえなくなったりと一定の不便性もあります。しかし、常に「空気を運んでいる」と揶揄されながらも補助金をつぎ込んで動かしているバスが全国に多くある中、一つの検討すべき事業であるのは確かであると感じました。

次の講師の岩村氏は、地域の既存の大手交通事業者による制約を受けながらも、岐阜県でデマンドタクシー事業をされています。
高齢化率20%を超えている多治見市のある地域で事業をされていて、初期投資費用の三百五十万円の補助金を受けて平成22年に運行開始されました。
中でも大手交通業者からの圧力があるなか、地域の理解によって「地域公共交通会議」の承認が得られたことが大きいということで、現在も順調に動かしているということでした。

オンデマンドバスやタクシー事業を新たに福祉的観点からはじめようとするとき、最大の障壁は、既存の業者との競合です。オンデマンドバスを新しく始めることで、タクシーの売り上げが落ちたり、路線バスの利用客が経たりすると、そうした事業者がなりたたなくなってしまいます。

しかし、先の松丸氏や岩村氏が仰っておられたのは、確かに一部既存業者と食い合うらしい(実証実験では20%強の利用者が路線バスやタクシーからオンデマンド交通へシフトした)のですが、これまでそうした公共交通機関を利用せず家族の送迎(31%)、マイカー運転(14%)、バイク・自転車(24%)を利用していた方々が新たにオンデマンド交通を使うようになったということで、既存業者からも一部流入はあったももの、需要のほとんどはこれまで公共交通機関を使ってこなかった方たちというデータが出されました。
そこからもわかるように、オンデマンドタクシーやバスというのは、既存の路線バスやタクシーとは違うつかわれ方をするというモデルだということです。

その後、武本氏、寺田氏と話は進みました。
寺田氏のお話の中では、全国の3万8千あるバス系統のうち、2万8千が赤字路線になっているということです。中でも国の補助がない県市単独補助バスは9200系統に上るそうで、全国のバス路線は全体的に赤字体質であるということでした。そうした中でやはりオンデマンドバス・タクシーというのは有効な手段であるということです。
長野県飯田市、滋賀県彦根市、埼玉県ときがわ市などの事例を紹介され、「フルデマンド方式:利用者のドアから目的地のドアまで」~「セミデマンド方式:ある程度、運行時間や運行ラインを決めておき事前連絡を受けてバスやタクシーを走らせる」など様々なオンデマンド交通のあり方について情報共有いただきました。


以上、簡単ではありますが、議員研修での講義内容です。
ひるがえって、大津市でも旧志賀町や、葛川、伊香立、真野、仰木などの主に市北部では買い物難民になりかねない地域が出てきています。過疎率も高まってきており、路線バスも一時間に1本か0本しか通らないので、自家用車に乗れなくなったご高齢の方は家族に運んでもらったり、地域の助け合いの中で移動していたりします。
JR駅に行くアクセスに困る方が多く出てきており、すでに問題は顕在化してきています。

昨年、市役所内部の若手職員の方を中心に、オンデマンド交通に関する提言がなされました。
そして、私が所属する施設常任委員会も、研修から2日後の今週月曜日に開催されて、私なりの意見も申し上げました。

補助金を垂れ流して、誰も乗らない公共交通をほっておくよりも、オンデマンド交通を用いて、地域のために役だつ交通網をつくるべきと思います。
具体的な方法については勉強不足ですし、なによりも地域の既存バス事業者、タクシー事業者のご理解をいただかねばなにも始まりません。とはいいながらも、いつまでもこのままでいいわけがありません。
私は抜本的に公共交通をみなすべきと今回の研修会で感じました。


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