【一般質問解説①】就職氷河期世代に対する支援について

ホームブログ>【一般質問解説①】就職氷河期世代に対する支援について



 議員任期で最後となる本会議一般質問が終わりました。
 6、7回に分けて質疑応答と、質問背景などを描いていきたいと思います。
 



 就職氷河期を経験した人なら分かりますが何社エントリーしても面接にも進めず、就職先も他の世代に比較して不本意な人が多くいました。一般的に就職氷河期とは1993年~2005年の間に初職を経験した人とされています。
 非正規率が高く20代を失われた10年に過ごした人が多い為、キャリア形成をうまく積めていない人が多くいます。いまこの世代が40歳代に突入してきています。キャリア形成がうまくいかなかったため、転職市場においても不利であるばかりか40歳という節目を越えると大幅に求人数が減少します。ポテンシャル採用ではなくどれだけ実績を積んできたのかが40歳代以上の転職市場では求められるからです。
 私は2003年に会社創業して以来、この社会課題に取り組んできました。
 議員、しかもローカルな議員ではできることに限界があることもこの8年間で痛切に感じてきたことです。しかしながら議員で出来る事もあるとも信じて活動してきました。今回の質問は地方議員で出来る国家的課題に対する限界と可能性が交差するものとなりました。


Q(藤井)
 私が大学を卒業したのは2001年、失われた10年、ロストジェネレーションと呼ばれる就職氷河期世代のまっただ中でした。現在、1993年から2005年に間に学校を卒業した「就職氷河期世代」は大卒で36歳から48歳、高卒では32歳から44歳となっています。
 この世代は非正規雇用就業率が高いのが特徴で、初職で正社員就職ができなかった者はその後のキャリア形成において挽回することができず格差が生じているのが現況です。また低所得、無貯金である比率も高く、生活基盤が安定していないことから婚姻率も有子率も低くなっています。
 まだそれほど問題が顕在化していないのは、経済成長期に中流家庭を築いた就職氷河期の親世代が未だ健在であることが挙げられますが、あと20年もすれば、その親世代も平均寿命を越え、就職氷河期世代も多くが60代を越えることから、貧困世帯の増加や生活保護受給者増加による社会保障関連経費の更なる肥大化など、大きな社会問題になることが想定されます。
 わたし自身この問題に向き合うべく、公共セクター・民間セクターを横断して活動に取り組んできたところですが、実際に大津市という狭い市域において、こうした国家的課題に対応することの限界も認識しているところです。
 しかしながら、やはり大津市でも就職氷河期世代の支援のため何かできることがないか今一度、問題提起をすることでもって、今任期最後の質問としようと考えました。
 2018年4月現在、大津市では35歳から49歳までの「就職氷河期世代」は人口の21.6%にあたる7万4千人弱住んでいます。当に子育て責任世代とも言えますが、この世代の生活基盤の確立、健康の増進、老後の心配解消といった課題に対して、本市施策では、子ども・子育て支援や生活困窮者対策など部局をまたがって取り組みを進めているとは思いますが、実際のところ、そうした施策ではリーチ出来ないところに本当に支援を必要としている人たちがいるように感じています。
 支援を必要としている人は生活基盤を確立できていないため結婚していないことも多く、またそれなりに働けているため明日の食べ物に困るような生活困窮の状態にあるわけでもありません。しかし非常に不安定な生活基盤であり、老後の心配は尽きないと思います。そうした層へのアプローチが中長期的な視野に立つと重要であると考えるのです。
私としては就職氷河期世代の一人でもある越市長が率先して産学や他の自治体と連携したフラッグシッププロジェクトを立ち上げ、いじめ対策や女性活躍推進といった社会課題と同等の意気込みで取り組んでいくことはソーシャルインパクトの観点からも効果が期待でき、大変意義があることだと感じているところです。仮に私が市長という社会的ポジションであれば、大津市としてもこれまで以上に力を入れて取り組まなければならない重点分野として捉えると思います。
 そこで、就職氷河期世代に対する課題認識、今後どのように社会全体が取り組むべきと考えるか、また本市が施策展開の中でどのように取り組めるのか、ぜひとも越市長の考えを伺いたいと思います。

A(越市長)
 就職氷河期世代に対する支援についてのうち、就職氷河期世代に対する課題認識についてでありますが、私自身、就職氷河期世代の一人として当時の就職の厳しさは身をもって体験しており、どの世代にあっても一人ひとりの希望に応じた働き方を実現していくことが課題であると認識しています。
 次に、今後どのように社会全体が取り組むべきと考えるかについてですが、就職氷河期世代の方々が自身の希望に応じ、仕事で能力が発揮できるよう、就労支援や職場環境づくりに取り組んでいく必要があり、国においても、「正社員転換・待遇改善実現プラン」の中で「就職氷河期世代等に対する支援」を位置づけ、社会全体で取り組むことが示されていると認識をしています。
 最後に、本市が施策展開の中でどのように取り組めるかについてですが、本市では、学生を対象としてきた「就職フェア」において、平成28年度以降は、正社員として就職する機会を逸した非正規雇用の方や仕事を持たない求職者の方も対象に加えるなどの取り組みを行っています。このような事業の実施にあたっては、労働行政を所管する滋賀労働局やハローワーク大津、ヤングジョブセンター滋賀などとも連携を密にし、職業訓練に関する情報提供などの試みも行っているところであります。
 今後は、引き続きこれまでの取組を実践していくことが重要であると考えております。以上、私からの答弁といたします。


 * * *

 私なりの感想ですが、正直なところ、越市長からは就職氷河期世代が抱えている現状をそれほど深く心配していないように感じられました。
 自身が「就職氷河期世代の一人として当時の就職の厳しさは身をもって体験しており…」と述べているものの、その後の答弁を聞いても、あまり熱意を感じられません。市長の経歴がそれを物語っているのかも知れませんが、2000年に弁護士に合格し司法修習を経て2002年に法律事務所へ入所。その後2009年にハーバードLAWを卒業し2012年1月に大津市長になっています。
 就職氷河期世代ではあるものの、よくよく考えてみるとほとんど就職氷河期の厳しさを知らないのではないかとも思います。簡単に言えばエリート街道を進んできており、一般的な就職環境を肌で感じることはなかったのではないかと思うのです。
 最後に、「今後は、引き続きこれまでの取組を実践していくことが重要であると考えております」と述べていますが、私は全然不十分だと思います。質問文でも述べていますが、現にこの世代が社会問題になっていないのは、総中流の親世代が健在で、なおかつ非正規労働であったとしても明日の生活に困るような貧困状態にはまだ転落していないからです。しかし50歳代になれば更に生活は厳しさを増しますし、60歳代になれば親世代もこの世からいなくなります。これまでの取組に加えてより一層、力を入れて取り組んでいく必要があると思うのです。

 議員で出来ることは行政執行機関に対して政策提言を行うこと、審議過程を通じて意見を述べていくことなどに限られます。市長自身がそれほど大きな問題を感じていないのであれば、私が議員で出来る事はここらあたりが限界なのではないかと思うのです。

 私はまだまだこの社会課題に対して熱い思いを抱いています。
 議員であろうとなかろうと、しっかりと10年後、20年後の社会のためにも、前へ進んでいこうと考えています。


フジイテツヤ






▲ページのトップへ